ハラミを世に広めた「グルメ漫画」とは

そして1990年代、今ではお馴染みの部位である「ハラミ」がついに定番化する。ハラミを世に広めたのは、グルメ漫画『美味しんぼ』に登場する海原雄山だ。77巻でハラミについて「私もハラミを食べて以来、ロースだのカルビだのを食べるのがバカバカしくなった」という主旨の発言をしている(図表4)。

【図表4】『美味しんぼ』海原雄山のセリフ(意訳)
出所=『私のバカせまい史 公式資料集』(宝島社)

これ以降、焼肉店ではハラミの売上が上がったようで、焼肉の名店の店主の間では「ハラミは海原雄山が広めた」という共通認識があるのだとか。

こうして安くておいしいハラミが広まり、焼肉業界はますます盛り上がりを見せていった。

「希少部位ブーム」で細分化が促進

2005年になると、恵比寿に本店を構える「焼肉チャンピオン」がほぼロースだった部位をザブトンやトウガラシ、ミスジなどに細分化した。「希少部位」の誕生である。

【図表5】細分化されたロース
出所=『私のバカせまい史 公式資料集』(宝島社)

当時すでに希少部位の名前は存在していたが、あくまで食肉業界の業界用語であり、焼肉店でも一部の店で裏メニューとして提供する程度だった。しかし、焼肉チャンピオンの松下社長は実家の寿司店から影響を受け、マグロのように牛肉も細かく分けて提供するという発想に至る。これがきっかけとなって希少部位ブームが巻き起こり、空前の“ロース細分化時代”へ突入することとなったのだ(図表5)。

その後さらに細分化は進み、ホルモンの部位を合わせると、その数は約170種類にものぼる。

▼総評
日本では、細かく分けられたものを見つけた者こそが、ビッグビジネスをつかむ時代の寵児になれる。吉村崇(平成ノブシコブシ)
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