大幅下落の主因は「パニック売り」

株価下落、円高進行のきっかけは先ほども述べたように、2日の米雇用統計の発表ですが、弱気筋が一気に株式やドルを売りました。それが東京市場に伝播し、東京市場では2024年から新NISAを始めた“新人”を含む個人投資家などがパニック売りを受けるような形で機関投資家の一部も売りに回りました。

なぜ、“素人”の動きにプロが影響を受けたのか。実は機関投資家の中には、ある一定以上株価が下がると自動的に持ち株を売るプログラム売買を行う仕組みもあり、それも下げをより加速させました。

また、株式トレーダーの多くは米国の場合だとS&P500、日本ならTOPIXなどのインデックス(指数)と自身のパフォーマンス(実績)を比較されます。それは給料や報酬にも関連しているはずです。したがって、市場全体が大幅下落する際には、どれだけ早く持ち株を売るかが勝敗の分かれ目になりますから、それがさらに市場全体の売りを加速するという面もありました。

逆に、6日のように市場全体が大きく上げる際には、トレーダーたちはいち早く買う傾向があります。

株式市場を分析すると

私は株式市場を分析する際には、上場企業の全体の業績を見るとともに、PER(株価収益率)を大きな参考としています。PERは株価を一株当たりの純利益で割ったもの(株価÷一株当たり純利益)です。

今回の乱高下の直前では、日経平均採用銘柄全体で「17倍」程度でした。コロナ前はだいたい「14倍」ほどでしたから、コロナ前よりは上昇していますが、コロナ明けの景気回復を考えれば、それほど過熱した水準ではありませんでした。

それが、日経平均が大幅下落した5日の終値で13倍台まで一気に落ち込みました。これは売られ過ぎの水準です。6日には14倍台に戻しました。これでようやくコロナ前の水準です。

企業業績的には、米国はピークアウトしていますが、それでも8四半期連続で実質GDPが増加するなどまずまずの水準。日本も絶好調ではないものの、4~6月までの企業業績は全体的にはそこそこ良い水準だと私は分析しています。

米国で少し心配なのは、企業の景況感を表す米ISM景気指数が、ここ4カ月「良い、悪い」の境目を表す50を切っていることです。この数字は製造業の購買担当者など景気を敏感に感じる立場にある人を対象に調査をしているものですが、企業側からは景況感は少し厳しいものがあります。