ロシア側による助言と支援があったことを窺わせる

【瀬下】韓国の情報機関である国家情報院が公表した情報によると、露朝首脳会談の際、北朝鮮側がロケットの設計図と失敗した2回の打ち上げデータをロシアに提供し、その後ロシア側の分析結果が北朝鮮に伝えられたとされています。北朝鮮やロシアのメディアが公開した報道写真から、ボストーチヌイ宇宙基地を訪れた金正恩総書記一行の中に、北朝鮮のミサイル開発者の責任者とされる張昌河チャンチャンハ国防科学院長、現在はミサイル総局長になっていますが、彼と金正植キムジョンシク党軍需工業部副部長とみられる人物が加わっていることが分かりました。そうだとすれば配下の技術者たちも同行していたはずで、技術者同士の協議が行われた可能性があると思います。

また、金正恩訪露後にロシア空軍所属の旅客機が平壌に飛来しており、何らかの人的往来が行われた模様です。北朝鮮は8月の打ち上げ失敗の直後、3回目の打ち上げを10月に断行すると予告していましたが、実際の発射は11月でした。この微妙な時間のズレは、ロシア側による新たな助言と支援があったことを窺わせます。

写真=iStock.com/Thaweesak Saengngoen
※写真はイメージです

軍事偵察衛星の性能向上に取り組むと思われる

【手嶋】軍事偵察衛星は、偵察能力に劣る北朝鮮にとっては是が非でも保有したいものだと思います。弾頭を装着して運搬するミサイルは、ロシアの技術的なテコ入れもあって、かなり改善が進んだと見られます。一方で、偵察衛星が実際に機能しているのかについては検証が必要です。偵察衛星が撮影する画像は高度な軍事機密であり、公にはしませんから、実際にどれほどの解像度を達成しているのか、疑問は残りますね。

【瀬下】それを検証する手掛かりは、1回目の打ち上げ失敗で黄海に墜落した偵察衛星の機体です。韓国軍が海中からこの機体を回収して調査した結果、「搭載されていた偵察衛星の分解能力はサブメーター級、つまり縦横1メートル未満の物体を識別する性能に遥かに及ばず、軍事偵察衛星としての性能を発揮するものではない」と発表しました。また、韓国の国防長官は、衛星が軌道を周回していることを示す自己位置信号は受信されているが、対象を撮影して地上に伝送する電波信号は捉えられていないとして、宇宙軌道で正常に働くことを実証するための試験用の衛星であるとの見方を示しています。北朝鮮は、2024年に3基の打ち上げを行うと予告していますから、性能の向上に取り組むものと思われます。