漁業法改正で「個人的な消費目的でも禁止」と明記

だが、ここでちょっとした疑問が浮かぶのではないか。そもそも「海の魚介類は漁師のものなのか?」と。

一般に海の魚介類は「無主物」とされ、誰のものでもない。漁業団体によると、「海には所有権が認められておらず、最高裁の判決でもそのことが裏付けられている」という。

ところが現実に「捕った者勝ち」というわけではない。魚介類を捕る行為については、海の利用という観点で、漁業権が漁業協同組合や漁業者に免許されており、漁師はその権利を持ちつつ、魚介類を獲っている。これに対し漁業者でない人が海で魚介類を捕れば、漁業者の権利を侵すことになるというわけだ。

多発する密漁の抑止策として、国は2020年に漁業法を改正。同年12月に施行された改正漁業法では、「特定水産動植物の採捕」に関する規定が新設された。原則として、アワビやナマコを捕ることを禁止し、2023年12月からはシラスウナギ(13センチ以下)を追加。それぞれ「採捕した数量や場所にかかわらず、個人的な消費を目的としたものであっても採捕は禁止」とし、違反者には3年以下の懲役または3000万円以下の罰金を科すことにした。

さらに、漁業権の対象となるサザエ、イセエビなどを一般の人が捕ることについては「漁業権または組合員行使権の侵害」として罰金が従来の20万円以下から100万円以下に引き上げられた。ただ、こうして罰則が強化されてからも、密漁は依然多発しており、前述のように検挙数は高水準となっている。

潮干狩りのための熊手にもルールが存在

少々複雑だが、海で魚介を捕ることについてはこのほかに都道府県ごとの規則もあり、アサリやハマグリなどの潮干狩りについて禁止区域が設定されていたり、「○センチ以下は捕ってはいけません」といったサイズ制限もあったりする。さらに、違反漁具を使用することはできなくなっている。

漁具については例えば、潮干狩りで活躍する「熊手」は地域によって幅の規制などはあるが使用はほぼOK。ただ、100円ショップやホームセンターなどでも最近見掛ける「忍者熊手」と呼ばれる爪の間に網が付いたタイプはNGという地域がある。

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潮干狩りで賑わう横浜市の海の公園

実際、神奈川県や愛知県などでは、禁止漁具としてリストアップされているほか、柄の先が箱型の網になっていて、貝を根こそぎ捕れそうな鋤簾(じょれん)という漁具は使用不可であるケースが多い。アワビの密漁ほどではないが、これらの違反者には「6月以下の懲役又は10万円以下の罰金が科される場合がある」(神奈川県水産課)ため、注意が必要だ。

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潮干狩りでの使用が禁止されている地域もある忍者熊手