【グループ 考え方に問題がある】陰謀論タイプ
マルチ商法にハマってしまうことも
世の中では、さまざまな陰謀論が、まことしやかに囁かれています。「世界を陰で支配しているのは、ユダヤ資本や秘密結社のフリーメイソンだ」といった古典的なものだけでなく、最近では、「中国で開発中だった生物兵器が流出して、新型コロナのパンデミックが起こった」といったものもあります。皆さんも一度ならず、耳にしたことがあるでしょう。とりわけ、現代社会はITやインターネットの発達によって、フェイクニュースと同じように陰謀論も拡散しやすい環境であることに注意すべきでしょう。
ただし、陰謀論が広がりやすいのは、ネットなどのせいだけではありません。誰が聞いても眉唾な都市伝説やトンデモ論も少なくありませんが、中には、「なるほど」と信じたくなる内容もあって、陰謀論は、質のレベルにも大きな差があります。
陰謀論に潜んでいる、現代人の心をとらえるチャームポイントはどこにあるのか。代表的なのは、政治家や大企業、学会といった、現代の権威に対するアンチテーゼ。現代人の多くは権威に不信や不満を感じているので、陰謀論にもっともらしい根拠を示されると、心が傾いてしまうのです。
職場に陰謀論好きなビジネスパーソンがいたらどうするか。アフターファイブの飲み会などで、みんなが知っている陰謀論を酒の肴に、冗談を言っている程度なら罪はないでしょう。しかし、陰謀論を真に受けて、「中国の政府系ファンドに狙われて、ウチの会社もヤバいんだって!」「会社に残っていると、中国のスパイにされる!」といった、企業の実害につながりかねないデマを信じ込んだり、社内で広めたりするのは問題行動です。
また、「急成長しているベンチャー企業の未公開株への投資」といった投資詐欺まがいのマルチ商法に、知らないうちにハマって、同僚を勧誘しているケースもあります。放置すると、被害者を増やしてしまうので、防ぐ手立てを講じなければなりません。
陰謀論やマルチ商法が厄介なのは、ハマった当の本人が「よかれ」と思って、まわりの人にも広めているケースが多いこと。もっともらしい根拠があって、親しい同僚に熱心に勧められたら、何も知らない社員は、容易に洗脳されてしまうリスクがあります。
被害を防ぐには、社内ではびこる陰謀論やマルチ商法に気づいた社員が、内部監査などを担うセクションに積極的に報告すること。そして、陰謀論やマルチ商法に関する情報を社内に周知することです。そうすれば、もし誰かに、陰謀論やマルチ商法の話を持ちかけられても、話半分に聞いて、やり過ごすことができます。
陰謀論やマルチ商法の危険性を、社員が知っているのと知らないのとでは大違い。例えば最近、有名人の名前を騙ったSNS上などでの投資詐欺が社会問題になっています。しかし、報道がこれだけ広まった今、同様の手法で騙される人はほとんどいないのではないでしょうか。職場においても同じです。陰謀論やマルチ商法が身近にあり、どのような手法で被害者を増やしているかなどを周知することが、被害を最小限に食い止める一番の方法です。(和田)
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月2日号)の一部を再編集したものです。