体内の熱を分散する役割も担っている

ミトコンドリアにおける鉄の役割

ミトコンドリアは細胞内でのエネルギー生産の主要な場であり、ATP(アデノシン三リン酸)を生成します。ATPは細胞のエネルギー代謝において中心的な役割を果たし、その生成と供給は体内の機能維持に不可欠です。ATP分子はてエネルギーを放出し、ADP(アデノシン二リン酸)やAMP(アデノシン一リン酸)に変換されます。この過程で得られるエネルギーが細胞の機能や代謝反応に重要な働きをしています。

この代謝経路には、鉄や他のミネラル、ビタミンなどの栄養素が必要です。特に鉄はヘモグロビンとミオグロビンを通じて酸素を細胞に運び、酸素が存在しないとATPの完全な生成が阻害されるため、鉄の十分な摂取がエネルギー代謝に欠かせません。そして、この過程で鉄が多くの酵素反応の補酵素として必要なのです。

鉄欠乏症では、ミトコンドリア内のこれらの酵素活性が低下し、エネルギー生産が不十分になることがあります。これにより、体の各組織や器官でのエネルギー供給が制限され、全身的な疲労感や身体活動能力の低下、体力の低下が生じる可能性があります。

鉄と体温調節

鉄分は、体温調節にも関与しており、特にヘモグロビンを通じて体内の熱を分散する役割があります。暑さや寒さに応じて体温を調整し、代謝の最適化を図ります。

鉄欠乏では体温調節機能が低下し、特に暑い季節や運動時には体温のコントロールが困難になることがあります。体温調節機能が低下することで、疲労感や体力の低下につながるだけでなく、高体温を来す熱中症を引き起こす可能性が高まるのです。

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レバーはもちろん、赤身肉や魚介類もいい

このように、非常に重要な役割を担っている鉄分を補うために食品の選び方が重要です。私も実践している摂取方法を紹介します。

・レバー
レバーには非常に鉄分が豊富に含まれています。調理法を工夫して、夏でも食べやすい料理として取り入れましょう。

・赤身の肉
牛肉や豚肉の赤身には鉄分が多く含まれています。グリルや焼き肉など、軽い調理法で食べるのがお勧めです。

・魚介類
特に貝類や魚介類には良質な鉄分が含まれています。寿司や刺身など生で食べることで栄養価を保持できます。