ビッグモーターの保険金水増し請求には経営陣の発言が影響
当初、経営陣は工場長の指示によって従業員が数々の不正行為を行ったと記者会見で述べていました。しかし、いざ社内調査を行ってみると、経営陣の発言によって部長や次長、工場長などが動いていたことが明らかになっています。なぜ経営陣の発言に誰も疑いの目を向けなかったのかと言えば、経営陣があまりに大きな意思決定権限をもってしまい、そのことが大きな組織不正につながったからです。
しかも、工場長以下の従業員の多くが「上司からの不正の指示に逆らえない雰囲気があったから」とアンケートにて回答しており、経営陣の「正しさ」が単一的=固定的に現場まで伝わって不正行為が行われる仕組みができあがってしまっていたのです。
つまり、組織において単一的=固定的な「正しさ」が維持されることは、時代や場所にそぐわない「正しさ」が組織において浸透し、それが世間や他の組織と大きく乖離することによって組織不正が生まれると言えるのです。
上司からの指示でも、それが相対的に見て正しいかを疑え
こうした事態を避けるためには、「正しさ」とはつねに複数的=流動的なものであると考えることだと言えます。たとえ経営陣の「正しさ」であっても単一的=固定的なものととらえてしまうと、どうしてもその「正しさ」を疑うことをせず、その「正しさ」に向き合わないで(それを前提として)行動するようになってしまいます。
ですが、「正しさ」とはいつも変わりうるものですから、その「正しさ」自体を疑い、その「正しさ」を相対化するような仕組みもより整備していく必要があると思うのです。もちろん、すでに多くの組織において内部通報制度や社内会議において、こうした絶対的な「正しさ」を疑う仕組みは整えられていると思います。ただし、まだまだわが国ではこうした取り組みが不十分かと思いますので、より一層拡充への道が切り開かれることを願っています。
何より「正しさ」とは、決して単一的=固定的なものではなく、複数的=流動的なものではないでしょうか。組織において絶対視されている「正しさ」であっても、それが別の「正しさ」と突き合わされることによって初めて良い緊張関係を築くことができると考えられるべきだと思うのです。