豊田章男会長への賛成比率が12.64ポイントも下落

トヨタ自動車など自動車各社による「型式認証」を巡る不正の影響は予想以上に大きい。日本ではメディアの報道が控え目なこともあってか、あまり深刻に受け止める向きは多くないが、日本を代表するトップ企業の不正は、日本という国の信用も大きく揺るがしている。

中央合同庁舎第3号館
写真=時事通信フォト
2024年5月5日、国土交通省、観光庁、海上保安庁が入る中央合同庁舎第3号館(東京都千代田区霞が関)

それがトヨタ自動車の株主総会にも表れた。6月18日に開いた株主総会では豊田章男会長ら10人の取締役選任議案などが諮られた。異変が起きたのは会社提案の第1号議案。取締役候補10人のうち、豊田章男会長への賛成比率が71.93%と突出して低かったのだ。2番目に低かった早川茂副会長でも89.53%の賛成票を獲得、佐藤恒治社長の95.44%など残りの7人は92%から97%の賛成票を得た。つまり豊田会長が突出して低かったのだ。1年前の株主総会での豊田氏への賛成率84.57%だったので、12.64ポイントも下落したことになる。

豊田氏に反対票が大きく増えた原因は認証不正であることは明らか。機関投資家に議決権行使を助言するインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスが、選任議案に反対するよう推奨していた。ISSは認証不正について「(豊田氏に)最終的な責任があると考えるべきだ」と指摘していた。こうした反対推奨に、外国人投資家が従った結果だと見られている。

トヨタの経営に対する国際的な信用が毀損した

もっとも、トヨタ自動車株のうち「外国法人等」が保有しているのは21%程度。国内の機関投資家の一部も再任反対に動いた可能性が高い。国内機関投資家は議決権行使の基準を持っており、不祥事が起きた場合など責任がある取締役の再任に反対することなどが盛り込まれているためだ。

とはいえ、議決権行使助言会社が圧倒的に影響力を持つのは海外の投資家で、豊田会長への批判票がこれだけ多くなったということは、トヨタの経営に対する国際的な信用が大きく毀損きそんしたことを示している。

不正を巡る豊田会長の不用意な発言が不信感を広げた面もある。

6月3日に開いた記者会見での発言に朝日新聞が噛みつき、「トヨタでも認証不正 会長『撲滅は無理』『完璧な会社ではない』」という見出しを立てた。2022年にはグループの日野自動車で不正が発覚。2023年は子会社のダイハツ工業でも大規模な認証不正が露見して全車種の出荷を一時停止する事態に直面した。1月30日の会見では、ダイハツの問題はあくまで同社の風土の問題だとし、トヨタ自動車に関しては「私の知っている限りはない」(豊田氏)と発言していた。にもかかわらず不正が明らかになったことへの反省が見られないと映ったわけだ。