iPhoneの製造場所が中国からインドに移転するなど、サプライチェーンの世界的な再編が起きつつある。エコノミストのエミン・ユルマズさんとフリーアナウンサーの大橋ひろこさんの書籍『無敵の日本経済! 株とゴールドの「先読み」投資術』(ビジネス社)より、一部をお届けする――。

サプライチェーンが日本に戻ってきている理由

【エミン・ユルマズ(以下、エミン)】中国の変化により、結果的には西側諸国は中国と距離を置いていくことになり、ものづくりのサプライチェーンが日本をはじめとした先進諸国に戻ってきています。

もう一つは、ウクライナ戦争による影響で、先進諸国に重要な動きが見られることです。

経済制裁されたロシアがその報復として、ドイツをはじめとした先進諸国に天然ガスを売らなくなりました。結果的にドイツは何とかして乗り越えたけれども、ガス価格が上がり、インフレに見舞われています。

そんな現実を踏まえて、先進諸国は完全に方針を“転換”したのです。エネルギーの調達を権威主義国家に依存しないようにしようと。

【大橋ひろこ(以下、大橋)】自分たちの影響力圏内で何とかできるようにしようと。

【エミン】そうです。資源供給を含めて、従来とは異なる自由主義陣営内でのサプライチェーンをつくるべきだと、考えを改めたのです。

【大橋】サプライチェーンを再構築する動きですね。

「インドのiPhone」は品質に疑問

【エミン】要は、グローバル化から“ブロック化”に移行するということなのです。でも、それは結果的に“コスト増”を招きます。

【大橋】それはそうですよね。全般的にコストの高い、自由主義陣営内でサプライチェーンを築くわけですから。

【エミン】これに対して、少しでもコストを抑えようとして、多くの人は「コストが安い国に、先進国用の供給メーカーを連れて行けばいい」と主張するわけです。中国の代わりに、例えばベトナムとかマレーシアとか、あるいはインドネシアとか。

しかしながら、ハイテクな部品のなかでも、最上位にある部品の製造については、申し訳ないけれど、そのような国に技術的な蓄積があるとは思えない。製造を任せられるほど、信用することはできないでしょう。

インドのタージ・マハルをiPhoneで撮影する手
写真=iStock.com/DKart
「インドのiPhone」は品質に疑問(※写真はイメージです)

【大橋】インドでiPhoneをつくり始めていますが、専門家の話では、品質が芳しくないらしい。製造した工場によって品質にバラつきが見られると聞いています。