人件費の安い日本に舞い戻っている

【大橋】あとは人件費でしょうか。ひと昔前までは日本は人件費が高いから、工場を海外に持って行ったのに、それが今度は日本の人件費が安いことから、舞い戻って来る。この20年でこうも変わるか、という印象です。

たしかに相当な円安が日本回帰を促しているところ、大なのですが。

【エミン】あとは国家安全保障の問題です。核となる技術については、どこにも任せることはできない。下手な国に生産部門を置くと、技術が盗まれてしまう危険を伴うからです。

そしてしばらくするとわれわれは、おそらく、そんなに自由に動けない世界に生きることになるでしょう。

いずれ中国に行けなくなる

【大橋】どういうことですか? 自由に動けないって。

【エミン】いまはまだ、われわれは世界中をほとんど自由に動けるけれど、ロシアには行けなくなってしまった。

【大橋】たしかにそうですね。

【エミン】つまり、いまはひと昔前のソ連時代と一緒になってしまった。かつてはソ連に行く際に、いろいろな制限があったでしょう。そのうち、たぶん中国に行くにはさまざまな制限が掛けられるようになります。

無人の空港ターミナル待合室
写真=iStock.com/KEHAN CHEN
いずれ中国に行けなくなる(※写真はイメージです)

【大橋】そういえば、アステラス製薬や野村證券の現地法人の社員が、中国当局に拘束されたままでしたね。

【エミン】たぶん、そのうちに中国には完璧に行けなくなるんでしょう。中国に用のない一般人ツーリストなどは……。そしてこれからは、かつての「竹のカーテン」が復活するのでしょう。

だから、そういう意味では、これからの中国はきわめて危険な国なんです。そのうち、中国人も日本に来られなくなるでしょうね。今度は日本が、入国条件を厳しくすることが考えられるし、かつ、中国は自国民を外に出さなくなる可能性が高い。