中国が「中所得国の罠」を抜け出せるかは疑問

【エミン】例えば、私の母国のトルコも行き詰まってしまった。国民1人当たりの名目GDPが1万ドルから伸びなくなりました。いわゆる「中所得国の罠」に陥ったのです。

マレーシアも同様で、一定レベルまでいって、そのあとはスタックしている。たぶんインドも中所得国まではいくけれど、その後はどうでしょうか。

中国も現在「中所得国」ですが、技術的にかなり良いところまで伸びたことから、10%以上の高度経済成長を20年近く続けることができました。ただ今後、「中所得国の罠」から抜け出せるかは疑問ですが。

ユニクロ製品の品質が上がった理由

【大橋】ユニクロの製品を見ると、如実にわかりますよ。1990年代初頭、生産開始当初の中国製はあまり品質が良くなかったですね。2000年以降は日本製と遜色なくなりましたから。

それがいまの中国では人件費が高くなりすぎたので、バングラデシュやネパールあたりに生産拠点を移している。そうすると、やっぱり中国並みといかないです。

衣料品工場に並ぶ刺繍機
写真=iStock.com/andresr
生産開始当初の中国製はあまり品質が良くなかった(※写真はイメージです)

【エミン】アパレルの縫製業ですら、現実は厳しいわけですよ。例えば最先端の半導体生産工場を任せられる場所、国は本当に限られている。ポンと工場を出せば稼働するわけではないからです。その工場の周りにサプライチェーンがそろっていて、水源や運輸関係の優れたインフラが整っていなければならない。