品質検査の偽装や書類改竄は「日本のお家芸」
第二次世界大戦後、日本が経済大国へとのし上がってきた背景には「高品質」という評価を得たことがあった。当初は米国などの商品をモノマネした低価格品を売る国という評価だったが、独自に技術力を磨き、新製品を生み出して、いつしか、高品質のものを低価格で売る素晴らしい国という評価を勝ち取った。「メイド・イン・ジャパン」は品質を保証するブランドになったのだ。
ところがバブル崩壊後、品質を巡る不正が相次いでいる。この20年、品質検査の偽装や書類の改竄などが、まるで日本のお家芸のようになっている。2021年に社長が辞任に追い込まれた三菱電機では35年にわたって検査不正をしていたことが発覚。現場で不正を行うことが当たり前になっているなど、「組織的な不正だったと認めざるを得ない」と会見で述べていた。2022年10月までの調査では本社事業所で197件もの不正が発見されている。しかも、こうした不正が、本社の指示で行われていたものではなく、現場の判断で行われていたことが明らかになっている。
「日本の品質」に対する世界の評価は高くないのかもしれない
豊田社長が当初、トヨタでの不正は「私の知る限りはない」と言っていたのも正直な答えだったのだろう。だが、こうした現場の不正カルチャーが日本企業に広がっているとすると、事態はさらに深刻だ。それを一掃するのは並大抵ではないからだ。
かつて、コマツの社長会長を務めた坂根正弘さんが、「怒らないから問題をすべて報告せよと言ってもトップには上がってこない」と嘆いていた。それでも坂根氏は折れずに過去の負の遺産を処理すべく事実解明を進めた。三菱電機は洗いざらい調べ尽くしたと言っているが、それで不正カルチャーが一掃できたのかはまだ分からない。まして、これから不正の温床である社風改革を迫られるトヨタの場合、一朝一夕にはいかないだろう。
日々露見する企業の不正に慣れた我々が思っているほど、もはや「日本の品質」に対する世界の評価は高くないのかもしれない。為替がこれだけ円安になっているのも、日本のモノもサービスも、高い値段では売れなくなっていることの表れなのだと考えるべきなのだろうか。ルールは破っていても品質に問題はない、というのが日本人の主張だと分かったら、誰も「世界一の品質」だと言って買ってくれなくなるだろう。それほど、日本一の会社で発覚した不正の影響は大きいと覚悟しておかなければならない。