「正解を示す」から「ヒントを与える」へ変わる指導者の役割

制約を用いた方法は、練習だけでなく指導者の役割も変えていくと予想されます。今までは直接お手本を示すのがコーチの仕事でした。一方、制約を用いる練習においては、選手が理想の動きをみつけるのを手伝うのがコーチの役割となります。

今泉拓『行動経済学が勝敗を支配する 世界的アスリートも“つい”やってしまう不合理な選択』(日本実業出版社)

それに合わせて選手に求められる姿勢も変わるでしょう。今まではコーチから教わった動きを再現することが求められましたが、制約を用いた練習では自分で正解をみつけていく必要があります。何度もトライアルアンドエラーを繰り返す積極性や正解がみつからなくてもめげない粘り強さが重要になるでしょう。

この指導者と選手の関係性の変化は、一般社会でみられる変化にも類似しています。現代の先生や上司は、生徒や部下に対して逐一指導するよりは、モチベーターとしての役割が求められる傾向にあります。スポーツの指導者も例外でなく、上から正解を指導するよりは、選手に寄り添うことが大切になってきています。

選手に直接介入するのではなく、選手が自身のペースで技能を習得するのを待つという点で、アフォーダンスは新しい指導方針としても注目を浴びていくことが予想されます。スポーツは社会的な行為なので、社会的な価値観の移り変わりが反映されますし、変化に敏感であることも成功するための秘訣といえるでしょう。

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