「エクストラコールドは冷たいだけじゃなく、泡のきめが細かいんです。そういう見た目の美しさもビールの楽しさのひとつだと思うんです。いままでビールに縁がなかった若い人たちが『へえ、ビールってこんなにキレイなんだ』と思ってくれるだけでも、ビールの価値を伝えたことになる。いま、ビール離れが進んで、ビールの売り上げは右肩下がりですが、それは僕たちの伝え方、見せ方が悪い。まだまだアイデアはあるはずです!」
怪気炎を上げる杉浦のわきで、同僚や後輩たちは苦笑する。
「仕事をしようとデスクに座ると、ニヤニヤした杉浦さんがこちらを見てるんですよ(笑)。どうしたんですか、と聞くと『(アイデアが)出た!』と。思いついたら、すぐに話しかけたくなるんでしょうね」(梶浦瑞穂)
「日曜日にアイデアを練りに練って、月曜日は朝5時に起きて誰かにそのアイデアを聞かせようと手ぐすね引いてるんだから(笑)」(木村宏之)
「この調子だと杉浦さん、また月曜日は早朝に出社してくるぞ!」(岡村知明)
同僚・後輩の杉浦を揶揄する言葉から、温厚な人柄が伝わってくる。杉浦は決して天才型のアイデアマンではない。休日や通勤時間まで費やして、アイデアを考えては手帳に書き留め、アイデアの裏付けになるデータを集める。こうした不断の努力を、実に楽しそうに続けているからこそ、社内、社外の人たちもそれに巻き込まれていく。杉浦の繊細さと推進力は、次に何を生み出すのだろうか。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時