試験課題の傾向がない

ちなみに藝大の卒業生で、現在は私が主宰するアート・アンド・ロジックの美術講師をお願いしているアーティストから聞いた話があります。

東京藝大以外の各美大受験については、実技試験の傾向と対策があり、予備校講師は各美大の出題傾向に合わせて指導するとのことです。

しかし、こと藝大受験に関しては、出題される試験課題の傾向がない。そのため美術予備校では「東京藝大を卒業した講師たちが、過去問も参考に、藝大の先生たちが出しそうな課題を考え、その課題で受講生が絵を描く」というのを繰り返すそうです。

写真=iStock.com/bee32
試験課題の傾向がない(※写真はイメージです)

では、実際にはどんな試験問題が出題されるのでしょうか?

東京藝大に限らず、美術系の大学の入学試験は、学科試験と実技試験に分かれます。

たとえば、油画専攻の具体的な試験科目としては、①センター試験、②第1次実技試験(素描=デッサン)、③第2次実技試験(絵画=油絵)となります。

2020年度(令和2年度)までの4年間の油画専攻の入試問題は次のとおりです(東京藝大ウェブサイトより。出題に関わる条件や注意書きなどの詳細は場合により省略)。

「出題 絵を描きなさい」

〈令和2年度 第1次実技試験 素描〉

出題 「三つの手」

【条件】「りんごを持つ手」「紙を持つ手」「何も持たない手」の全てを描くこと。
【モチーフ】りんご・トレーシングペーパー

〈令和2年度 第2次実技試験 絵画〉

出題 絵を描きなさい。

【条件】
・カンバス、スケッチ用紙を試験室から持ち出すことはできません。
・制作にイーゼルを使用する場合は、室内の置き場所から1人1台持ってきてください。
・また、椅子は1人2個まで使用できます。