むしろ現役合格者は生きづらい?

この点については、笑えるような笑えないような話もあります。

実は現役合格者にとっての1年生の時期は、とても生きづらい場であるそうです。

現役合格をされた卒業生の坂本博史さんによると、入学するや否や、先輩はおろか同級生にさえも子供扱いをされたとのこと。

いじめとは言わないまでも、「浪人生活という苦渋を舐めず、苦労を知らずに入学しやがった青二才が」と言わんばかりの冷たい視線を浴びたそうです。

ちなみに2年生に進級したあとは、このような扱いは受けなかったそうですが、坂本さんは、それまで自分では味わうことができなかった先輩風を吹かせる醍醐味(?)を知りたいがゆえに、あえて留年をしたそうです。

変幻自在な入試問題が毎年出題

では、なぜ他の大学に比べて、また現役合格者の多い音楽学部と比べても、美術学部はこんなにも浪人生が多いのでしょうか?

その原因は「入試問題」にあると私は考えています。

一般的に入学試験には、「お受験」と呼ばれる小学校受験から、中学入試、高校入試、そして大学入試に至るまで、必ず学校ごとの傾向があります。当たり前ですが、傾向があるからこそ対策が立てられるわけです。

入試には学校ごとの傾向がある
写真=iStock.com/atakan
入試には通常は学校ごとの傾向がある(※写真はイメージです)

読者の皆さんも、志望校の入試の過去問を解いて、受験の傾向と対策をしたはずです。

しかしながら東京藝大の美術学部、特に油画専攻においては、明らかな傾向がまったくみられない変幻自在な入試問題が毎年出題されるのです。