日本の大学入試は1回きりの筆記試験で合否判定される。この仕組みは理想的なのか。現役東大生ライターの布施川天馬さんは「筆記試験はどんな人にも公平だ。最近は経験などを評価できる推薦やAO入試を重視するべきという声も聞かれるが、そうなれば経験をカネで買える富裕層ほど有利になるだけだ」という――。
合格を目指して必死に試験勉強をしている少年
写真=iStock.com/S-tomi
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話題になった「学歴重視から経験重視へ」のテレビ番組

みなさんは、大学受験にどのようなイメージを持っているでしょうか。僕は経験がないのですが、頭に「合格」と書かれたハチマキを締めて、朝も夜も血眼になって一心不乱に勉強し続ける……なんて想像をする方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれませんね。それは行きすぎだとしても、「大学受験=勉強」というイメージがある方は少なくないのではないかと推察します。

先日、テレビ朝日の特別番組「選挙ステーション2021」内での討論を巡って「学歴社会から経験重視の社会へ」と唱えた起業家の方がネット上で炎上していました。彼女は「偏差値の高い良い大学に入学できた人だけが高収入が保証された良い企業に入社できる」と日本の学歴重視社会を批判し、その解決策として、個々人の経験を重視する社会に変えるべきだと訴えていました。

この討論のテーマは「格差をなくすためにはどうすべきか」というもの。同番組に出演されていたイェール大学助教授の成田悠輔氏が「むしろそれは一番格差が広がる」と突っ込んでいたのが印象的でした。

なぜ「経験重視」だとむしろ格差が広がってしまいうるのか。これは行き過ぎた経験重視が問題になっているアメリカで教鞭をとっている成田氏だからこそできた発言なのだと思います。先ほど僕が述べたように、日本で「大学受験」といえば、「勉強」や「ペーパーテスト」というイメージが強いと思いますが、アメリカではむしろ経験を重視とした面接などによる入学テストを行っているのです。

良い経験を得られるかどうかは親の財力に依存する

僕は学力をメインに測る現行のペーパーテストか、経験を重視するテストかを選択できるのなら、前者を選びます。もちろん、学力だけがあればいいという話ではありません。勉強ができるからと言って、あらゆる能力が高いというわけではないからです。

アルバイト先で「東大生なのにそんなこともできないの?」と言われてしまった、なんて話もよく聞きます。僕自身も一度言われたことがありますし、東大生だからといって、別にいきなり仕事がバリバリできるわけではありません。ペーパーテストが必ずしも優秀な人間を選抜できるとは限りません。

しかし、いまのアメリカのような「経験重視」よりはよっぽど社会にとってマシな結果を得ることができるだろうと考えます。それは、学力や偏差値はある程度個人の力でカバーすることができますが、入学試験にプラスになるような経験はほぼ完全に親の財力に依存してしまうからです。