アメリカでは富裕層に有利なペーパーテストが廃止に
僕は彼らのことをまったく嫌ったり僻んだりしているわけではありませんし、むしろその優秀さには本当に感服しています。とはいえ、まさか大学に入るまでにそんな経験を積んでいるとは思いませんでした。東京に生まれてから20年あまり、東大に行くまでは渋谷・新宿にすらロクに訪れたことの無かった僕にはあまりにも信じられない話が出てきたので、この時は心の底からビックリしてしまったことを覚えています。
もちろん、すべての推薦生がこのような仰天体験をしているわけではないでしょう。とはいえ、推薦入試の場合には、ペーパーテストでなく面接や書類審査による選抜が行われる分、どれだけ魅力的に映る経験値を積むことができているかが重要になる部分も大いにあるのではないでしょうか。
実際、アメリカの入試では、ペーパーテストよりも個人の課外活動実績などが非常に重視されています。特にカリフォルニア州などは、高等裁判所から「ペーパーテストは貧困層などの弱者にとって不利になっている」という理由で、ペーパーテスト禁止令が出されています。基本的に「一発勝負」である日本の大学入学共通テストと違い、アメリカのテスト(有料)は何回も受け直すことができ、「お金持ちほど繰り返し受験できるから」という理由のようです。
ですが、個人の実績勝負なんて話になったら、貧乏人に勝ち目なんてありません。国内の狭い一地域に閉じ込められていて、物理的にも精神的にも拘束が多い状況下にある子どもと、国内外問わず自由に移動して見聞を深められ、少なくとも金銭的に自由な子ども、どちらの経験が豊富になりうるかと言えば、やはり後者でしょう。
前者の学生の経験と、後者の学生の経験とは全く質が違うものですから、そもそも同じ軸で評価すること自体がおかしいことではあります。ただ、後者の方が、箔をつけやすい環境にあるという点で、有利になりやすいのです。