なぜテナントではなく買取仕入れにしたのか

では、イトーヨーカ堂側のメリットはどうでしょうか。先に述べたように買い回り率の向上以外にもあります。

今回の取り組みは、アダストリアが商品を作り、その商品をイトーヨーカ堂が全品買い取って販売する買取仕入れになります。アダストリアとして、在庫リスクは原則ありませんので商売上メリットがあります。

イトーヨーカ堂としては買取販売しますので、在庫リスクと値下げロスは発生するものの粗利率は50%近くは確保できるでしょう(粗利率は筆者推測値)。

もしこのブランドをテナントとして誘致して賃料をとるようにすればこれらのリスクはなくなりますが、売り上げの15~20%程度の家賃収入だけになりますから、イトーヨーカ堂としては買取仕入れをしたほうが儲かる可能性は高くなります。販売店舗数を拡大していけばなおさらでしょう。

今回の取り組みは両社にとって非常にメリットが大きいと言えるのです。

筆者撮影
筆者撮影
生活雑貨、服飾雑貨売り場を付加しているのも従来の平場にはない取組

GMSより高く、ユニクロより安い

実際にどのような商品展開をしているのか。実際にイトーヨーカ堂木場店にある1号店に行ってみました。

1号店の売り場面積は150坪。商品構成比はウィメンズ45%、メンズ25%、キッズ5%、服飾雑貨20%、生活雑貨5%。

価格帯はニコアンドやグローバルワークの1~2ランク下、ジーユーやしまむらの1ランク上程度の価格帯です。

イトーヨーカ堂木場店にはユニクロが同一フロアに入っていますが、ほぼ同程度かユニクロよりも1ランク下程度の価格で展開されています。図表6「グレード×テイストマップ」に表したように、FOUND GOODの最大の特徴はこの価格設定にあります。

写真=筆者購入商品 アイテムはシンプルな着こなしができるような組み合わせを重視

ブラウス1900~3900円、カットソー900~4900円、アウター3900~9800円、服飾雑貨1000~3900円という展開です。

このゾーンはつまり、従来のGMS平場よりも若干上でユニクロよりも若干下という絶妙なゾーンで展開しているのです。

この価格帯でトレンド寄りの商品展開をしているブランドはほぼ見当たりません。つまり空白市場です。比較的買いやすい価格で従来のGMS価格からあまり上げることなく、30~40代の子育て世帯の客層が購入しやすいブランドを作ったというのが、第一の注目ポイントと言っていいでしょう。