祖業で不振が続くイトーヨーカ堂
日本のアパレル小売り市場の数値変化から、GMS衣料品を分析していきます。
現在日本のアパレル小売市場は8兆7千億円(2021年度)です。そのうちもっともシェアの高いのはユニクロやアダストリアが含まれる専門店チャネルで、全体の半分以上を占めます。
次がネット販売などのその他チャネル、百貨店チャネルが続き、量販店市場は今や6.9%のシェアです。15年には9%のシェアがあったのですから6年間で大きくそのシェアを落としているのが分かります。
次に、衣料品関連の主要部門別売上高推移で見てみるとGMS衣料品の実態がさらに見えてきます。
日本のGMS衣料品売り上げは見事に右肩下がりです。
GMSの総販売額は21年/12年比較で115.8%と増えています。一方で衣料品部門は紳士、婦人問わずすべてで減少し、売り上げは約10年で半分近くにまで減少。「身の回り品」まで入れても8250億円です。市場は確実に縮小しています。
ではイトーヨーカ堂の衣料品売上高はどうなっているのでしょうか。イトーヨーカ堂の衣料品売上高は21/12比較で47.2%と大きく減らしています。イトーヨーカ堂はGMS全体の衣料品動向よりも厳しいのがわかります。
これはイトーヨーカ堂がGMS店舗を閉鎖したり、衣料品平場(自主運営の衣料品売り場)を徐々に縮小してきた(12年度に139店舗あったGMS店舗は21年度には99店舗に減少)ことが理由です。
さらに1店舗当たり衣料品売上高も減少が続いています。祖業が衣料品であるイトーヨーカ堂としては非常に残念な実態が続いていたのです。
親会社のセブン&アイHDはCVSを中心とした食料品に注力しており、自社での衣料品販売からは撤退、GMS業態の縮小という方針を出したのもやむを得なかったと言えるでしょう。
ユニクロよりも人気のアダストリア
一方のアダストリアは日本のアパレル企業の中では勝ち組と呼ばれる企業の一社です。
2位のしまむらとはまだ大きく差が開いていますが、確実に業界内でのポジションを上げています。
アダストリアはこの2年間でさらに業績を伸ばし、売上高は2桁増となっています。人件費などの販管費も増えていますが、それでも経常利益は152.9%です。当期純利益率も4.9%と年々高まっています。
結果的にアダストリアの人気は就活でも高まっているようで、繊研新聞の就職意識調査(24年春卒業予定者)ではユニクロのファーストリテイリングを抜いて、前年4位からトップに立っています。
好業績、かつマルチブランド、マルチカテゴリー展開で全国に出店しているアダストリアは、業績と共にその認知度も急激に高まっているようです。