スキルや資格より、人柄を重視

一方でメンバーシップ型における雇用は、いわば「白紙契約」のようなもの。特にわが国の新卒採用において顕著だが、入社時点の職務は厳密に特定せずに人員を募集し、人柄や潜在能力を判断して選考をおこない、まずはその会社の一員(メンバー)として迎えるかどうかを決める形をとる。そのうえで、入社後に適性を見極めて配属部署を決めたり、仕事の様子をみて異動させたりする点において、「人に仕事をあてはめる」方式なのだ。

したがって重視されるのは職務遂行に必要なスキルや資格よりも、「前向きな意欲」「主体性」「周囲の人とうまくやっていける力」といった人柄に属する部分であり、「●●株式会社という共同体の一員となること」が雇用の本質であるが故に、「メンバーシップ型」と呼ばれるのである。

筆者作成

日本企業と欧米企業の差異を表現する事例としてよく語られるステレオタイプに、

「日本企業は長時間労働だが、欧米企業は残業もなく、ワーク・ライフ・バランスが充実している」
「日本企業は少々サボっていてもクビになりにくいが、欧米企業ではアッサリクビになる」

といったものがあるが、まさにこれは「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の差異が分かりやすく表出した点である。

話が少々脇道に逸れるが、わが国における有休消化率の低さを理解する一助ともなるので、ここで「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の雇用における大きな差異について解説しつつ、ステレオタイプの謎を解いていこう。

外国人がどんどん休暇をとれる理由

まずジョブ型の世界では、会社の経営幹部となり、バリバリのハードワークで高給を得る「エリートコース」と、現場実務を粛々とこなす「ノンエリートコース」に入口段階で厳然と分かれており、自らの意思で選択しない限り、そのキャリアコースが交わることはない。したがって会社に何年勤めようが、自動的に上位職に昇進することはなく、基本的には同レベルの現場実務を続けていく形となる。

管理職など別の職域に挑戦したり給与アップを実現したりしたい場合は、組織内でそういったポジションの欠員を待つか、組織内外で該当ポジションを積極的に探し出し、自ら応募して勝ち取らなくてはいけないのだ。

すなわち、「ずっと決まった仕事をやり続ける一般社員」の状態が続くため、自分の範囲の仕事だけを終わらせて帰る。脱落や劣後といった心配もないため、休暇取得にも抵抗なく、どんどん休む。当然無茶な長時間労働をする理由もないため、ワーク・ライフ・バランスが充実する、という構図になる。