東京都は巨大な自治体であり、政策を遂行するためには都庁だけでは難しい。澤氏が「都庁ホールディングス」と呼ぶ理由はここにある。政策連携団体や事業協力団体が担う意味はないわけでないが、本当に必要なものかどうかは状況に応じて精査するべきではないか。単なる天下り先のポスト、既得権と言われても仕方ない現状があるように感じる。

「再々就職先」は公表の対象外

民間企業への再就職は天下りとして問題はないのであろうか。

東京民報2023年11月26日号は、「三井不動産 東京都幹部9人が天下り 外苑再開発 強行姿勢の陰で」の見出しで、東京都が推進する神宮外苑再開発計画(新宿区・港区)の事業施行者、三井不動産グループ2社が都退職幹部の天下りを9人も受け入れ、事業を所管する都市整備局と深い関係にあることが明らかになったと報じた。

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記事のなかで、全国市民オンブズマン連絡会議幹事の清水勉弁護士は、「都とのパイプ役にOBを使い、都政をコントロールし影響を与えようとしてきた癒着関係の疑念が生じてもおかしくない」と指摘している。

また清水氏が指摘するように、都は幹部退職者の氏名を公表しているが、その後民間企業に渡った元幹部は公表の対象になっていない。「幹部退職者の再就職先公表制度は骨抜きになる。再々就職先もその後の就職先もことごとく公表すべきだ」という指摘はその通りだ。

官民の癒着、税金の無駄遣いの恐れ

冒頭で、許認可権限をちらつかせた天下りが横行すれば、利益誘導など官民の癒着につながると述べたが、東京都はその予算規模から、民間企業からみれば、大口の発注元でもある。

天下りを受け入れることで、民間企業側には受注で優位な立場になろうとする意図が生まれる。それによって競争が阻害され、無駄な税金を使うことにもなりかねない。

天下りは都民の生活に密接な問題となっている。先述の通り都庁でも過去に改善策が講じられているが、十分とは言えない。4年に一度の都知事選が近い。都民の皆さんがこの問題に関心を持ち、活発な政策論争が行われることを期待したい。

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