年収2000万円超のポストも…

そもそも、なぜ東京メトロが都庁幹部の天下り先になっているのだろうか。

東京メトロは愛称で、正式には東京地下鉄株式会社という。帝都高速度交通営団(営団地下鉄)の民営化により2004年に発足した特殊会社で、国と東京都が株をほぼ折半している準国策企業という一面を持つ。そのため、副会長や副社長のポストに副知事経験者が座ってきている。

もちろん彼らには役員報酬が支払われている。有価証券報告書によると、東京メトロの役員報酬(社外取締役を除く)は1人当たり平均で2000万円ほどになる。はとバスは「役員報酬は公開していない」(広報室担当者)としているが、社長報酬は1000万円ほどと過去に報道されている。東京メトロの天下りポストは別格で、副知事経験者にあてられてきた。局長経験者などの幹部職員だと年収1000万円程度のポストが用意されるようだ。

現役時代の年収に比べれば低く、かつて存在した退職金も廃止されているようだ。それでも定年退職後5年ほどは年収1000万円を超えるポストが用意されているわけであるから、一般人にはうらやましい限りだろう。

東京メトロのシンボル
写真=iStock.com/Sergio Delle Vedove
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巨大化した天下りネットワーク

うらやましいだけで、問題は済まない。都庁では天下りという言葉は使わない。「再就職」と呼ぶ。むろん、個々人には職業選択の自由があり、民間にも同様なシステムがある。高い見識や能力を持つ行政官OBが民間で活躍することを一律に規制すべきでないとの考えが一般的だが、許認可権限をちらつかせた天下りが横行すれば、利益誘導など官民の癒着につながる。

そもそも天下りポスト欲しさに公的な組織が作られ、税金の無駄遣い、あるいは民業圧迫が行われているとの指摘もある。また、時代の変化にともない不要となった団体が、天下りポストの減少を嫌がって温存されるおそれもある。

さらに、本当に見識や能力が評価された上での採用なのか、という問題もある。静岡県の川勝平太知事が県庁の新入職員への訓示で、農業や畜産に携わる人を引き合いに出して「皆様は、頭脳、知性の高い方です」と発言し、辞任に追い込まれたが、この天下りを巡る問題でも官尊民卑の発想が根底にあるのではないかと感じる。