逆境を経験して、乗り越えたときに脳が成長する
この実験結果について、マイヤーは次のように述べています。
「若いときに大きな逆境を経験して、それを乗り越えた場合、それ以降にまた逆境が訪れると、対処のしかたが変わってくる。ただし、それは非常に大きな逆境を経験した場合に限られる。ちょっと困った程度のことでは、脳に変化はおこらない」
「あなたなら逆境を乗り越えられる、と言われるだけじゃダメなんだ。(「がんばれ」ではダメなのですね。/筆者注)脳の神経回路の再配線が起こるには、下位の抑制領域(辺縁系=ストレスを感じるところ/筆者注)と同時に、制御回路(前頭前野/筆者注)が活性化する必要がある。それは実際に逆境を経験して、それを乗り越えたときに起こることなんだ」
「困難なことに出会っても、必ず克服できる」「自分で自分をコントロールできる」という自信を持つこと、「こうすればこうなるはずだ」と自信を持って思えることが、困難を乗り越える力となります。若いときの制御可能なストレス体験がレジリエンスを生み、その後の大きな逆境にも立ち向かうことができるようになる、ということです。そのとき脳は、神経回路の再配線がなされて「すごい知能」に育っているのです。
子育ての「迂直の計」(軍争篇)
【書下し文】
軍争の難きは、迂を以って直となし、患を以って利となす。故に其の途を迂にしてこれを誘うに利を以ってし、人に後れて発し人に先立ちて至る。此れ迂直の計を知る者なり。(軍争篇)
【現代語訳】
戦闘が難しいのは、遠まわりが逆に近道となるように不利を有利にする知恵が必要だからだ。したがって、わざわざ遠まわりをして遅れているように見せかけて相手に優勢であると思わせておき、敵に遅れて出発しながら敵に先んじて戦地に到着する謀議をし、自陣が有利な態勢をとること、これを迂直の計を知るという。
【育児対訳】
子育てが難しいのは、試行錯誤することが目標に到達する近道であると考える智恵が必要だからです。