場面を考えないで使えば、逆効果となる

競技中の選手には、「がんばれ! がんばれ!」でいいと思います。途中であきらめてしまったら、結果は出ないからです。大勢の人から応援されれば、苦しさを乗り越え、ふだん出ないような力が発揮されることだってあるでしょう。

スタジアムで応援する観客
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ただし、ふだんの生活のなかで「がんばれ! がんばれ!」と言われつづけるのは、「自分に負けるな」「あきらめないで、最後までやり抜け」とずっと強要されているのと同じことです。これでは子どもは疲れ果ててしまい、生きる希望を見失ってしまうかもしれません。この場合の「がんばれ」は、子どもからすれば「おまえはいま、がんばってない、だからがんばらなければならない。がんばらなければ、生きている価値もない」というメッセージを受け取ることになります。

明確な目標があるのなら、「がんばれ」も効果があるでしょう。「なにに対してがんばるのか」がわからないまま「がんばれ」と言われたところで、それは空疎な言葉となります。「人の気持ちも知らないでがんばれるか」、あるいは「勝手なことを言うな」という気持ちになるだけです。試行錯誤にしても、自分でやってみる前から「がんばれ」と言ったのでは、やる気を育むことはできません。やり抜く力に必要な意欲がわいてこないのです。

試行錯誤が見られたら、「がんばれ」ではなく「がんばってるね」

「言葉がけとは、行動に対する同時性と随伴性である」と指摘したのは、ある有名な心理学者――ではなく、かくいうこの私なのですが、これは「子どもをほめる言葉がけは、子どもが何かをしているときにその行動を言葉にすることと、行動を終えたときにそれを追随して承認したときにこそ期待する効果が伴う」という意味を指します。

つまり、子どもが試行錯誤する姿が見られたら、そのときは「がんばれ」ではなく「がんばってるね」と声をかけること。試行錯誤している最中に「こうしたらどう?」「こうしたほうが、うまくいくわよ」などという余計な口出しは一切禁物で、子どもの考えにまかせること。そこは「待つ」「見守る」「まかせる」の姿勢を維持し、やり終えたら「がんばったね」「がんばってたね」「一生懸命やったね」「よく考えたね」と、子どもの行動を認める言葉をかけること――そうすれば、子どもはほめられたことで自信がつき、意欲がわき、やり抜く力が身につき、たくましい姿に育ちます。