子どもの成長のために、親はどんな声をかければいいのか。幼稚園長で児童文学作家の小島宏毅さんは「『がんばれ』という声かけには気をつけたほうがいい。明確な目標があるのならいいが、『なにに対してがんばるのか』がわからなければ、空疎な言葉になってしまう」という――。

※本稿は、小島宏毅『孫子の兵法から読み解くAIに負けない「すごい知能」の育て方』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

手をつないで歩く親子連れ
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです

子どもたちに身につけてほしい「やり抜く力」

一見まわり道のようでも自分で試行錯誤しながらいろいろ試してみて、どうすれば良い結果が得られるかを自分で工夫する機会が子どもには必要です。そうすれば、人より遅れをとっているように見えても、長い目で見れば自分で困難を乗り越えられるようになります。これがレジリエンスと言われるもので自己管理力、自制心という自立に必要な力になります。まわり道は、自立への一本道なのです。

以前、『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(アンジェラ・ダックワース著、ダイヤモンド社)という本が話題になりました。自分のやりたいことや興味関心のあることに取り組み、最後までやり抜くということはとても大切なことです。うまくいかなかったら、どうすればうまくできるようになるか、それを自分で考えて工夫してみる試行錯誤する力、自分が思ったとおりの結果でなくても、めげずに何度でも挑戦する力――すなわちやり抜く力は、ぜひ子どもたちに身につけてほしい力です。

「がんばれ」という声かけは正しいのか

そのために、どんな言葉で声かけをすれば、効果的でしょうか。誰もがぱっと頭に思い浮かぶのは、「がんばれ」でしょう。「がんばれ」と応援すれば、子どもはやり抜くことができる、そう考える方もいるかもしれません。たしかに、「がんばれ」は相手の気持ちを強くすることもあり、わかりやすい励ましの言葉です。たとえば、なにかの競技に取り組む子どもに対し「がんばれ、がんばれ」と応援する光景はよく見られますし、子ども自身も後押しされ、「がんばってみよう」という気にもなるかもしれません。

しかし、いつも「がんばれ」と言っていればやり抜く力を育むことができるかといえば、そうでもありません。場面を考えないで使えば、逆効果となります。それは、「がんばれ」とは「困難にくじけず、最後までやり遂げよ」というメッセージだからです。つまり、この言葉は子どもに大きなプレッシャーを与えることにもなるのです。