怒りは弱さの裏返し…

【編集部】マンガではミルもヤスミも「怒りに任せるといい結果にならなかった」と言っていますね。

【小川】その一瞬はストレス発散ができて気持ちがいいかもしれません。でも、相手も自分も傷つけて、結果的に苦しむことになる。

逆に冷静に対処できたときは、自分を誇らしく思うはず。同じことを言うにしても、感情で叱責するか、理性を使うのかで受け入れられ方も全く違う。

【編集部】理性を総動員して、あくまで冷静になることが大事なのですね。

【小川】みなさんもご存じの哲学者・ソクラテスは、奴隷に罰を与えなくてはならないとき、「もしも私が怒っていなかったら、お前を打ったところだ」と言った。つまり冷静でないときは罰を与えてはいけないと逆説的に言ったのです。

さわぐちけいすけ・小川仁志『哲学を知ったら生きやすくなった』(日経BP)

例えば子どもを叱るのは、子どもが何か悪に陥ったり、悪い習慣が付いたりすることから守るためですが、冷静でなければ守りではなく、単なる破壊になってしまう。

【編集部】今回のヤスミもそうですが、疲れがたまったり自分に余裕がなかったりすると怒りが大きくなりがちですよね。

【小川】私は怒りというのは、弱さの裏返しだと思います。すぐカッとなる人は、自分の余裕のなさが怒りに置き換えられているともいえる。ですから、普段から時間的・精神的なゆとりを持ち、弱っているときには自分をいたわってあげるなど、工夫も大事だと思います。

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