結婚式の前にも顔を出していた

それまで私が抱いていた「社長」のイメージは、豪放磊落ごうほうらいらくでコミュニケーション能力が高くてオーラもある、というものでした。

ところが、自分のパーソナリティと重なるような経営者もいることを知って、ものすごいカルチャーショックを受けたんですね。

それからは、毎日のように栄電子に通い続けました。2年目の12月、私は家内と結婚式を挙げるのですが、式場に向かう前にも栄電子に顔を出していました(笑)。それくらい染谷さんに影響を受けていたし、学んだこともすごく大きかったです。

栄電子に入り浸っていた頃、私の業績は悪いままでしたが、どこかで吹っ切れたんでしょうね。

そのうち、自分の担当エリアにある会社すべてを回るようになりました。飛び込み営業を繰り返しているうちに、見る見るダンボール箱が名刺であふれ返るようになります。

「とにかく立派な経営者にお会いしたい」と思うようになったのが理由でした。

江副氏もあまり社交性がないタイプだった

そうやって、営業の面白さややりがいは感じられるようになったのですが、すぐに成績が上向くことはありませんでした。リーダーやマネージャーへの昇進も、決して早くなかったように思います。

リクルートでは管理職になると、江副さんの『マネージャーに贈る言葉20章』というパンフレットが配布されるんです。

その第1章に「マネジメントの才能は後天的」というのがありました。

《マネジメントの才能は、幸いにも音楽や絵画とは違って、生まれながらのものではない。経営の才は、後天的に習得するものである。それも99%意欲と努力の産物である。その証拠に、10代の優れた音楽家はいても、20代の優れた経営者はいない。》

聞くところによると、江副さん自身も社交性があまりない人だったそうです。カリスマ経営者というタイプでもなかった。

そうして考えると「あ、俺みたいなタイプでもいいんだ」と考えられるようになりました。

写真=時事通信フォト
江副氏もあまり社交性がないタイプだった(インタビューに応える元リクルート会長江副浩正氏、2003年2月25日)