良くも悪くも「空気」が支配する国

昨年、作家の島田雅彦氏が、安倍晋三元首相の銃撃事件について「暗殺が成功してよかった」と発言し、炎上、謝罪に追い込まれている。島田氏の発言だけではなく、その後の「謝罪」についてもまた、多くの批判が殺到した。彼の「言論の自由」を認めよう、という「空気」は、どこにもない。不謹慎であり、不穏当であり、不適切だという「空気」が作られると、その流れには逆らえない。

暴力を許さない、そんな「空気」は、多くの人が共有している。相手が安倍元首相であれ、乙武氏であれ、誰であれ、選挙期間中であろうとなかろうと、言葉には言葉で向き合わなければならない。たとえ建前だとしても、いや、建前ゆえに、みんながそう考えている。島田氏をめぐる騒動は、そうした「空気」を象徴している。

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今回の「選挙妨害」に関する「空気」も同じである。根本氏らの行為をどうとらえるかについては、見方がわかれるかもしれない。それでもなお、選挙をはじめとする民主主義の仕組みを守るためには暴力は絶対にあってはならない、そうした「空気」は揺るがない。

だからこそ、「言論の自由」を最大限に守る必要があるのではないか。

島田氏も根本氏も、そして乙武氏も、みんなが自由に発言でき、政治にかかわれる。そのためには、たとえ「一定以上」と留保をつけたとしても、権力が勝手に使える余白を残す法律に頼ってはならない。言論には言論を、という近代社会の原則を粛々と、淡々と貫く。あくまでもその範囲で、「表現の自由」も「選挙の自由」も守られねばならない。

こうした教訓を与えてくれた点で、根本氏らの選挙活動は、大きな意味があったのではないか。

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