北海道札幌市で安倍晋三首相(当時)が街頭演説中に「安倍辞めろ」とヤジを飛ばした2人が北海道警の警察官に現場から排除され、損害賠償を求めた裁判で、札幌地裁は3月25日、原告側の「勝訴」判決を言い渡した。

原告は大杉雅栄さん(34)と桃井希生さん(26)で、北海道に対し、慰謝料660万円の損害賠償請求し、札幌地裁は88万円の支払いを命じた。

第25回参議院選挙で、安倍晋三首相の演説中に「安倍帰れ」などとヤジを飛ばし、北海道警に移動を促される男性(左)=15日、札幌市中央区
第25回参議院選挙で、安倍晋三首相の演説中に「安倍帰れ」などとヤジを飛ばし、北海道警に移動を促される男性(左)=2019年7月15日、札幌市中央区(写真=時事通信フォト)

判決を言い渡した後、広瀬孝裁判長は「原告らの表現の自由は警察官らによって侵害されたものと判断しました」と説諭した。

判決要旨の言い渡しが終わると、法廷には大きな拍手が沸き上がった。

問題のヤジは、2019年7月15日の参院選の最中に起こった。

街頭演説中に安倍首相に対して、大杉さんが「安倍辞めろ」「帰れ」

と声をあげると、北海道警の警察官に囲まれてその場から排除された。

次に、別の場所で桃井さんが「増税反対」と訴えると、警察官に移動するように求められ、90分間、複数の警察官に付きまとわれた。

2人は不当に行動を制限されたと訴訟を起こした。大杉さんは「ただ声を上げていただけだ。現場で小競り合いなどを生じさせることもないのに、警察官が警告もなく複数で排除したことは、実力行使」と訴えた。

桃井さんは「興奮状態にはなく、周囲に危険な状況を発生させていない。警察官に体当たりもしていない」と主張していた。

それに対して、北海道警は、大杉さんが安倍首相の乗っていた街宣車から3mほどの距離で大声を出して、右手を突き上げたことで「犯罪を起こす危険性が極めて高い」と主張。桃井さんについては「ヤジを制止したときに、警察官に体当たり、手をふりほどくなど、興奮していた。職務質問をしたが、つきまといではなく、安全な誘導」と反論した。

2人に対して北海道警は「危険な事態があった」「危害回避のため」と警察官職務執行法の要件を満たし、適法であったと主張した。

だが、北海道警の主張は裁判の審理で大きく崩れた。