「せいぜいがんばって」と言われて嫌な気分に…
Q:上司から「せいぜいがんばって」と言われて、嫌な気分になりました。
A:「せいぜい」には、もともとは悪い意味はありませんでした。しかし近年では意味の変化が進んでいるので、使う場合には(そしてそれを聞き手として解釈する場合にも)注意が必要です。
「せいぜい」は、漢字で「精々(精精)」と書きます。字を見ても想像されるとおり、「がんばって」「一生懸命」「力を振り絞って」というのが、本来の意味です。
「ソップも牛乳もおさまった? そりゃ今日は大出来だね。まあ精々食べるようにならなくっちゃいけない。」(芥川龍之介『お律と子等と』1920(大正9)年)
「上等のかつおぶしを、せいぜい薄く削り、わさびのよいのをネトネトになるよう細かく密におろし、思いのほか、たくさんに添えて出す。」(北大路魯山人『夏日小味』1931(昭和6)年)
このように、「せいぜい」はもともとは積極的な意味で「がんばって」という意見を示すものでした。これに対して、時代が下ると「(まあ、がんばったところで)たいしたことはないだろうが」というような、マイナスのニュアンスが伴うようになってきたのです。
解釈は年代差がある
ウェブ上でおこなったアンケートでも、「せいぜい」の解釈をめぐって年代差があることが見て取れます。「せいぜいがんばってください。」という言い方に対して、60歳以上の人たちでは「『いやみ』または『応援』の、どちらのつもりで言っているのかは、その場面によって異なる」という回答が4割程度を占めているのですが、20代ではわずかに2割程度です。
若い人たちの間では、「いやみとして言っている(言った人に、純粋に応援する気持ちはない)」という回答が、圧倒的に多いのです。
ぼくは、ほかの人から「ま、これからもせいぜいがんばって」と言われても、凹んだりしていません。あ、この人は伝統的な日本語を守っているんだな、と尊敬するようにしています。