靴下があったからパーカーが売れる
なぜファミマはパーカーなどのカジュアルウェアに手を付けたのでしょうか。
ファミマは靴下の成功を周知させた上で、靴下よりも販売のハードルが高いカジュアルウェアに枠を広げることで、消費者に心理的抵抗をあまり感じさせないようにしていると考えられます。もし、順番が逆で先にカジュアルウェアを発売していたら確実に失敗していたでしょう。
ファミマがカジュアルウェアへと手を広げた理由の一つに、客単価の大幅アップが挙げられます。スウェットパーカーは税込み3990円です。コンビニの客単価は数百円~1000円程度なので、1枚売れるだけで大幅な客単価アップが見込めます。1日に5枚売れるだけで2万円弱の売上高が稼げます。また、品質は、価格の割には生地も厚めでしっかりしているという評価があります。
スウェットパーカーは靴下よりも数量は捌けないと思われますが、先に述べたように各店に1枚ずつ納入するだけで1万6000枚強の生産が必要になります。5枚ずつなら8万枚、3枚ずつでも4万8000枚という数量になります。
洋服の縫製のミニマム生産ロットは工場やアイテムによって大小さまざまありますが、概して1型あたり100枚というのが一つの目安になっています。特に国内工場では1型100枚というのが目安になっており、アジア地区での海外生産でも1型300~500枚が目安になっています。
最近の中国では1型100枚という工場も珍しくなくなってきていると言われています。これらのミニマムロットを下回るとアップチャージによって1枚当たりの縫製工賃は高くなり、上回ると1枚当たりの縫製工賃は安くなります。
1枚当たりの製造コストは相当抑えられるはず
ユニクロやジーユー、しまむらなどは別格として、有名な国内ブランドでも1型100枚から1000枚程度の生産数量は珍しくありません。最低1万6000枚の生産数量が確保できるとなると、スウェットパーカーの縫製工賃がいかに安く抑えられるかは容易に想像できます。
また使われている生地についても同様です。1万6000枚分の生地量というと、ざっくり計算しても3万2000~4万メートルの生地が必要になると考えられます。これだけの生地量であれば1メートルあたりの生地値はかなり安く抑えられます。店頭販売価格を3990円に抑えることは別に伊藤忠商事でなく、他の商社であってもたやすいことでしょう。
今回のカジュアルウェアについて、現時点では販売数量は公表されていません。ただ、靴下がそれなりに売れて、他の衣料品にも波及している事実は、1店舗あたりの販売数量はそれほど多くないとしても、衣料品業界としては大いに考える点があると思っています。