繊維製品は「数は力」
衣料品・繊維製品は数量が多ければ多いほど1枚あたりの生産コストが引き下げられ、品質も安定します。結果的に低価格・高品質の物が出来上がりやすいというわけです。
実際、店舗を覗いてみると、靴下は平均して5~10足程度並んでいるようにみえます。仮に5足ずつの投入だとすると、生産数量は8万足、10足だと16万足となります。
これは筆者の推測ですが、ファミマは1回あたり10万足くらいの生産数量を持っていると考えられます。10万足の生産数量となると1足あたりの製造コストはかなり引き下げられ、製品の品質は安定します。恐らくユニクロに匹敵する数量で、1足あたりのコストも製品の品質もユニクロに匹敵するものだと考えられます。
これほどの生産数量があれば、伊藤忠商事でなくとも大手総合商社や大手の繊維専門商社ならどこでも現状品と同等の物が製造できます。それほどに繊維製品において「数は力」なのです。
「店舗数の多さ」は武器になる
一方、販売に関してもファミマの店舗数の多さは大きな力になっていると考えられます。年間平均500万足の売り上げはユニクロ並み、下手をするとそれ以上の販売数量になります。
一見販売数量としてはとてつもない量に見えますが、ファミマの1万6000店舗を持ってすると不可能ではなくなります。単純計算では、1店舗あたり年間300足を売ると480万足売れることになります。現状でもエリアフランチャイズ店を含めるとファミマの店舗数は1万6000店を越えていますから、1店舗当たりで販売しなければならない足数というのは1店舗あたり年間300足となります。
ファミマの靴下はシーズンレス商品なので12カ月売れるとして、1カ月あたり25足販売すれば事足ります。税込み429円の商品なので、1店舗で毎月25足売るのはそれほど難しいことではないでしょう。人口が多い地域の店なら25足以上売るのはたやすいでしょう。
このように、ファミマの靴下の成功は、ものづくり云々もさることながら、生産にしても販売にしてもすでに国内に整備されている1万6000店舗強の店舗数の多さを巧みに活用した成果だといえます。個人的には、商品のデザインやものづくりの姿勢よりも、この店舗数の多さのメリット部分だけを最大限に生かしたビジネスプランを評価しています。このビジネスプランを組み立てた構想力はすごいものがあると思います。