沿線用地を使った分譲業の拡大が目立つ
コロナ以降は分譲業の強化で、2021年度同期は営業収益約619億円に対し営業利益が約160億円、分譲業は営業収益約294億円で営業利益31億円。2022年度も同水準の黒字を計上した。2023年度は分譲が落ち着き、営業収益は約470億円、分譲業約143億円と元に戻ったが、分譲業の営業赤字が0.4億円にとどまったため、利益率で上回った。
その他、不動産セグメントが増収増益した事業者の主要因も分譲事業の拡大だ。沿線自社用地という含み資産の販売を調整して利益をコントロールするのは「私鉄ビジネスモデル」の王道である。
続いて百貨店やストアなど、沿線住民にとって最もなじみ深い事業といえる「流通セグメント」だ。こちらは2020年4月に収益認識基準が適用されたため、それ以前の営業収益とは比較できないが、影響の少ない営業利益で見ると流通セグメントを持つ17社中9社が増益となった。
2019年度同期比20.8%減、約22.4億円の減益となった東急は、ビル建て替えのため2020年3月に東急百貨店東横店、2023年1月に本店を閉店したことが影響している。同46.7%減、約12.5億円の減益となった小田急も、2022年10月に小田急百貨店新宿店本館を閉館し、再開発に着手しており、当面はこの状況が続くだろう。
増益のJR4社はレジャー関係が絶好調
躍進が目立ったのはJR4社だ。JR東日本は同34.7%増、約98.3億円の大幅な増益。JR西日本は2023年度からセグメントを変更しているので単純比較できないが、同105.5%、58億円増となっている。
各社の特色が現れるのは「運輸」「不動産」「流通」以外のセグメントだ。コロナ禍当初はホテルや観光施設などのレジャー事業が大打撃を受けたが、レジャー需要の急回復を受け、2023年度第3四半期累計は、全社ともレジャー関係セグメントが営業黒字となった。
特に阪急阪神HD(阪急交通社)、東武(東武トップツアーズ)、近鉄GHD(近畿日本ツーリスト)、JR西日本(日本旅行)の旅行事業は、コロナワクチン接種やコールセンター業務の受託で命脈を保ってきたが、国内旅行需要の急回復で本業に利益が戻ってきた。例えば阪急阪神HDの旅行業は2019年度同期比で約38億円の増益となった。
もうひとつのキーワードがインバウンドだ。日本各地にプリンスホテルを展開する西武HDを筆頭に、東武の日光、近鉄の奈良・伊勢志摩はホテル需要が回復し、各社とも増収増益だった。
例えば西武HDは、2019年度第3四半期累計の国内ホテルの宿泊者数は約382万人、うち約98万人(26%)が外国人客だったところ、今期は約364万人で、うち約98万人(27%)が外国人客となり、ほぼコロナ前の水準に戻っている。