アフターコロナで伸びる市場と、そこで求められる人材のスキルやマインドはどのようなものなのか。投資家の藤野英人さんは「消費者の価値観が変わり、損得ではなく幸せを基軸としたビジネスや人生の設計が求められる」と語る――。(インタビュー構成=THE21編集部)

※本稿は、THE21編集部『論客16人が予測する コロナ後の新ビジネスチャンス』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

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「損得」ではなく「幸せ」が重要

街中から人が消えた数カ月間――「ステイホーム」期間は、日本人の行動原理を大きく変える契機となりました。

この期間中、私たちは、これまで見てこなかったこと、気づかなかったことを数多く目にしました。それらは確実に、アフターコロナの生活に深い影響をおよぼすと考えられます。緊急事態宣言解除後も、すべてが元通りにはならないでしょう(6月5日に取材)。

必然的に、今後の日本社会や産業構造にも、大きな変化がもたらされると思います。それを予測するうえで、まず押さえておくべきなのが、価値観の変化です。

物事に対する判断基準が、「損か得か」から「ハッピーか、ハッピーでないか」へと大きくシフトしています。この価値観と親和性の高いモノやサービスに人気が集まっているのです。

家庭生活を豊かにするサービスが好調

例えば、健康。ランニングマシンやダンベルなどの運動器具が急激に売上げを伸ばしています。表層的には、ジムに行けなくなった人たちが代わりに買っていると捉えられますが、その奥にあるのは、人々が自分の身体に対してより意識的になったという変化です。

家具やインテリアも好調です。テレワークを快適かつ効率的にしたい、毎日過ごす空間をよりお洒落にしたい、といったニーズが高まっています。

花や植物も、法人向けの需要は減少したものの、個人向けが絶好調。庭やベランダで花を育てたり、家庭菜園を楽しんだりする人が増えています。

料理も大ブームです。SNSには自作の料理やお菓子を紹介する投稿があふれ、調理器具や調理家電、ガスレンジなどの企業が軒並み業績好調です。

もちろん、スーパーなどの小売業も好調で、冷凍食品の会社なども業績を上げています。また、パンやお菓子作りの材料や世界の料理を気軽に楽しめるスパイス、調味料類もよく売れています。ペット、ゲーム、書籍、釣り用品、パソコン関連なども好調です。

動画配信サービスやZoomなどのオンライン会議サービスも爆発的にユーザーを増やしました。通信やインターネットの重要性が今後さらに高まることは言うまでもないでしょう。

さて、ここまで挙げたモノやサービスは、すべて身の回りのものであることが共通項です。それはとりもなおさず、「家」の重要性が高まったということです。大人はテレワーク、子供は休校で、家族が24時間ともに過ごした経験は、家庭回帰のスイッチを押しました。外から内へと、人々の価値観が180度転回したのです。