自分を損なう“絶対に使ってはいけないタブーワード”
ネガティブなひとり言の中でも、最悪なひとり言があります。
「どうせ私なんて、誰も相手にしてくれないんだ」
この「どうせ私は~」というフレーズほど、自分を損なう言葉はありません。
ですが、クリニックを訪れるうつ病傾向の人の少なからずが、このフレーズをつぶやきます。
私は、「どうせダメだって、今言ったけど、何がダメなの?」と聞きます。
すると、「だって、今までもやろうと思ってきたけど、ダメだったから」とか、「今までできたことがないから」というような答えが返ってきます。
「どうせ」という言葉を頭に持ってくると、もはやすべてが否定されてしまう文脈になってしまいます。
でも本当に、すべてがダメなのでしょうか?
現実には、そんなことはあるわけがありません。
もし本当に、すべてがダメな人間だったら、今こうして生きて生活できてもいないでしょう。
しかし、朝起きて、準備をして、クリニックにやってきているわけです。
そして、私に面と向かって相談している時点で、人並みにできていることがたくさんあるはずです。
できていることを一切無視し、ダメなところやできていないところだけにフォーカスする言葉が、「どうせ自分は~」という言葉なのです。
それは本当の自分の姿を映し出す言葉ではなく、「自己否定」と「自己限定」を呼び覚ますだけの言葉です。
「だって、こうしてあなたは今日一日を生きているでしょう。それだけでも素晴らしいことじゃない?」
「あなたが存在していることで、力になっている人がいるでしょう?」
と、私は聞きます。
すると、自分を卑下ばかりしていた人もハタと思い至るようです。
否定的なひとり言は、脳の働きを低下させ、思考を停止させてしまいます。
「どうせ~だから」という言葉は、その際たるものです。
ひとり言のタブーとして、使わないように心がけてほしいと思います。
「不自然な言葉」は脳をフリーズさせる
良いひとり言は、「腑に落ちる」ものでなければなりません。
一見、肯定的な言葉でも、あまりにも不自然でそぐわない言葉では、良いひとり言とは言えません。
「すごいなぁ!」
心の底から漏れた言葉であれば、これほど良いひとり言はないでしょう。
ただ、頭の中ではさほどいいと思っていないのに、無理してつぶやいても効果はあまり期待できません。
むしろ本心ではそう思っていないのに、その気持ちをごまかしてつぶやくと、脳は混乱してしまいます。
脳というのは、とても生理的な仕組みで動いています。ですから、その生理に反するものを受けつけないという性質があります。
本心の言葉じゃなかったり、嘘の言葉だったりすると、ネガティブなひとり言と同じく、脳がフリーズしてしまう可能性があります。
その意味で、偽悪的で強引な内容のつぶやきや、決めつけのつぶやきも同じだといえます。
「しょせん結婚なんて、互いの利害で成り立つのさ」
「周りは悪人ばかりだ」
斜に構えた偽悪的な言葉や、強引な決めつけの言葉は、ネガティブな言葉と同じく脳の活動を限定してしまいます。
そもそも脳は、もっと賢かったり冷静だったりします。
本人が言葉にする内容に、嘘や誇張、思い込みや独断が混じっている場合、無意識でそれを察知しているのです。
「言葉」と「脳」が矛盾した状態は、不安とストレスを生んでしまいます。
それを感じないようにするために、脳は自ら判断を保留したり、騙されたふりをしてしまうのです。
いずれにしても、不自然で本心から離れたひとり言や、極端に決めつけが強く偽悪的な言葉は、脳の働きを抑えてしまうので注意が必要です。