AI時代だからこそライティング力が不可欠
こうした急速に変化する社会とライティングの結びつきについて悩んだ私の答えは、ただひとつです。
「それでもやっぱり、ライティングは重要で必要なものであり、練習すべきものだ」
AIが文章を作成してくれる時代だからこそ、むしろ人間が考えて書くライティングが一層重要なのです。なぜならば、思考そのものが力となる時代に突入したからであり、その思考力を鍛えるためにも、ライティングが不可欠だからです。ライティングはコミュニケーション手段にとどまらず、考えるという行為そのものです。思考力は、ほかの動物にもAIにもない、人間ならではの能力です。たとえ仕事をAIに明け渡すことになったとしても、そのAIを生み出し、活用できるようにする根幹である思考力だけは、人間が守り続けなければならないものです。
ユーチューブだって、意味のあるコンテンツを言葉と映像で伝えてこそ番組が支持されます。意味を持つ思考を鍛えられるのはライティング練習だけです。特にオンライン上で仕事をしたりコミュニケーションをはかろうとするならば、その意図をすばやく伝達することが求められます。それには書いてまとめることが一番なのです。
これがAI時代、オンライン時代でも、ライティングが必要とされる背景です。
お子さんたちの世代になればますます生活にAIが浸透しているでしょう。だからこそ、今からライティングを始めて考える力を鍛え、AIを活用する側にならなくては。これが、子どものうちからロジカルなライティングに取り組むことを勧める理由です。
プログラミングを学ぶより先にライティングを
子どもにプログラミングを学ばせたいと思っているお母さんお父さんなら、基礎的なコーディングであるスクラッチのこともご存じかと思います。文法があやふやな子どもでもプログラムが書けるとして、世界中の子どもたちがこのツールで作品を作り、プログラミングで披露したり学び合ったりしています。
このスクラッチを開発したMITメディアラボのミッチェル・レズニック教授は、「しかしながら、子どもたちには、まずプログラミングより先にライティングを教えるべきだ」と説いています。「プロのライターになりたい子どもは少ないのに、なぜ?」という問いに、教授はこう答えています。
「私たちの暮らしのいたるところに文章があります。ライティングは、人に考え方を教えてくれるものです。自分自身のアイデアを体系化し、改善して検討する方法を学ぶことができるため、ライティングが上達するほど、思考力も高まるのです」
お子さんが憧れている職業――配信者、プログラマー、医師、漫画家、教師、調理師など、どんな夢もライティング力からその一歩を踏み出せます。思考力を高め、自分自身を表現し、お子さんが願う未来を手に入れる。それにはライティング力が強い味方となってくれるのです。