※本稿は、米澤好史『発達障害? グレーゾーン? こどもへの接し方に悩んだら読む本』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
叱られても学べないから混乱する
もし、お子さんの言動に愛着の問題の特徴を少しでも発見した場合、気をつけていただきたいことがあります。
それは、困った行動に遭遇したときの“接し方”です。
こどもの困った行動の原因が愛着の問題である場合、その接し方しだいで、状況をより悪化させてしまうことがあるからです。
とくに一般的な子育てにおいて「いい」とされている対応が、逆効果になることがあります。
ここで思い出していただきたいのは、愛着の問題を抱えるこどもたちが困った行動をする背景に、〈感情〉の問題があるという点です。
困ったを増やす接し方① とりいそぎ厳しく叱る
こどもが困った行動をしたとき、大人はつい反射的に「そんなことしたらダメでしょ、やめなさい!」と叱ってしまうことがあります。
叱ることは、その行動をやめ、今後もしてはいけないと理解してほしくてすることですが、愛着の問題を抱えるこどもは、それを学ぶことができません。
なぜなら、自分の行動を反省して修正するには、自分の気持ちを振り返る必要があるからです。
愛着の問題を抱えるこどもは、感情の発達が未熟なため、この振り返りができません。自分で自分の気持ちがわからないのですから、当然です。もちろん相手の気持ちもわかりません。
そこで叱られてしまうと、こどもたちはさらに混乱します。
「なんだかわからないけれど、責められて嫌な気持ちが増えた」ので、相手を責めて自己防衛的になります。
叱るという対応は、こどもの嫌悪感や悲しみ、不安や怒りといったネガティブな感情を膨らませ、混乱した感情をさらに混乱させてしまうだけなのです。
叱れば叱るほど困った行動が増えてしまうタイプのこどももいれば、叱るといっさい口を聞いてくれなくなるこどももいます。
また、追いつめられるとパニックになり、攻撃行動を引き起こしてしまうこどももいます。
いずれにしても、「叱る」という対応は、愛着の絆がうまく結べていないこどもにとっての解決策にはなりません。
逆に、叱って行動がなおるような子であれば、愛着の問題を心配する必要はないと言っていいでしょう。