もっとも求められるスキルは「ライティング力」である

このように、小学校から職場にいたるまで、ライティング力ひとつで周りから一目置かれる存在になれるのです。職種や職務を問わず、作文力がもっとも求められるスキルとなるのもうなずけます。文章が上手に書けるということは、深く考え抜く力や説得力、広く影響を与えられる力の持ち主であるということを証明するのも同然です。勉強も仕事も人生も、望みどおりの成果を出して実力を認めさせるために重要なのは、一にも二にも作文です。また、不思議なことにこのライティング力は、一度身につけたら一生衰えることがありません。

こうしたさまざまな理由が、ハーバード大学が150年以上もの間、作文教育にまい進してきた背景です。それでも、ハーバード大学の卒業生の90%が、「在学中にもっとライティング術を学んでおくべきだった」と後悔しているというから驚きです。エリートの彼らも、文章の書き方は小学校の作文の授業からスタートしています。幼い頃から「論理的に考えて書くこと」を学んできたのです。

勉強
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです

ユーチューブがあってもライティング力は必要なのか

物書きで食べている人間として、私も少し前までは、「どんなにAIが発達しようと、書くという仕事に怖いものはありません」と胸を張っていました。ところが、AIがニュース記事や株式の分析レポートを書いただの、人間のコピーライター顔負けの筆力でマーケティング契約をまとめ、小説家や詩人よりも優れた作品を生み出しただのというニュースを聞くにつけ、心中穏やかではなくなりました。そしてこんなことを考えました。

「仕事に必要な作文はAIで十分こと足りるのに、私たちがライティングを学ぶのは何のため?」

時代はユーチューブ一色です。お金を稼ぐことも、学びもユーチューブで解決できます。ご存じのとおり、ユーチューブは主におしゃべりと映像でメッセージを伝えるプラットフォームです。だからこそ、こんな疑問を抱きます。

「おしゃべりと映像で解決できるのに、それでもライティングが必要なの?」

コロナ禍でステイホームを余儀なくされる間、ビジネスや教育など日常生活のあらゆる場面でオンライン化が急速に進みました。コロナ以前とは違って、今や、スマホひとつあれば、学びも仕事もどこからでも可能となりました。

「じゃあ、もうライティングは本当に必要ないんじゃないの?」