重点化は「AIのフレーム問題」をも解決する

AI(人工知能)に関する難問の1つとして「フレーム問題」というものがある。これは、問題解決のために必要な検討事項を、どの程度の範囲に設定するかという問題だ。

野口悠紀雄『ChatGPT「超」勉強法』(プレジデント社)

重要な事項をなおざりにすると、失敗する可能性が高い。かといって、あまりに些細なことまで検討すると、所定時間内に処理できない。

実は、この問題は、人間においてもある。前項や前々項で述べた「重点化」がそれだ。「重要なことは何かを見出し、それに努力を集中する」のは、勉強に限らず必要とされることだ。

問題は、「何が重要か?」を見出すことだが、勉強の場合には、「先に進んで、全体を把握する」ことが、「フレーム問題」の答えを見出す最も効果的な方法なのである。

「超」勉強法にはヘリコプターが必要

「超」勉強法では、基礎に拘泥せず、できるだけ早く先に進んで全体を捉える。このために、助けを借りてもよい。

逆向き勉強法を行なうには、道具が必要だ。なぜなら、基礎から順に進んでいるわけではないので、分からない用語や概念がつぎつぎに出てくるからだ。それらの意味を知るには、手助けが必要だ。

私が国家公務員試験のために勉強していたときには、このために経済学の百科事典を用いた。このことを、「百科事典というヘリコプターの力を借りて、できるだけ高いところに登る」と表現してもよい。そのため、逆向き勉強法を「ヘリコプター勉強法」とも呼んだ。

ある頃まで、勉強は、順序立てて進まなければならなかった。例えば歴史であれば、時代の順に勉強する。知りたいところだけをピンポイントで知るのは簡単なことではなかった。

だが、百科事典をヘリコプターとして使うことによって、「超」勉強法が可能になった。百科事典は、知の大衆化のためにたいへん重要な役割を果たしたのだ。