「信頼性の高い」ドコモはどこへ
もうひとつ、ドコモにとっての「アキレス腱」となりつつあるのが、ネットワークの品質問題だ。昨年末から今年初頭にかけて、大規模な通信障害が発生。7月にもspモードでトラブルがあり、また、お盆期間中も、国際ローミングサービスにおいて不具合が発生している。これまでドコモのネットワークといえば、3キャリアのなかでも信頼性が高かったが、たび重なる通信障害で、そのブランドも揺らぎつつある。(※すべて雑誌掲載当時)
「一連の事故が起きて、総務省から総点検しろという行政指導をいただき、やったつもりだったが、ちょっと深みが足りなかった」(加藤社長)
携帯電話キャリアの競争軸として、料金、端末ラインアップ、ネットワーク、サービスという4つがあげられる。ネットワークというドコモが得意としていた部分が、スマートフォン全盛になって、色あせてきたのは事実のようだ。これまで「つながりにくい」とされていたソフトバンクモバイルも「プラチナバンド」というNTTドコモやKDDIがメーンに使用している周波数帯でのサービスを開始した。2社のエリア品質に追いつくのには数年かかると見られているが、着実にNTTドコモの背後に近づきつつあるのは間違いない。
では、サービス面において、NTTドコモでは成長戦略をどう描いているのか。加藤社長は「Amazonを目指す」と明言する。
スマートフォンユーザーに対し、電子書籍やゲーム、映像といったデジタルコンテンツだけでなく、生活雑貨や消耗品などの物販を手がけていくというのだ。ドコモのスマートフォンから、手軽に日々の生活に必要なものを通信販売で購入できる世界を描く。
NTTドコモでは、すでに野菜通販の「らでぃっしゅぼーや」や、CD販売大手「タワーレコード」を傘下に収めた。またテレビ通販大手の「オークローンマーケティング」などもドコモの子会社だ。
NTTドコモがスマートフォンで大根を売るとなると、やや突拍子もない話のように見えるが、同社でコンテンツサービスなどを手がける阿佐美弘恭マルチメディア担当スマートコミュニケーションサービス部長は「いまのところは飛び地を買っただけにすぎない。順番が逆だったのかもしれないが、これからは総合サービス企業としての本流を整備していくつもりだ」という。
野菜やCDはあくまでごく一部であり、これから衣料品や生活雑貨などを通信販売できるように、整備を進めていく。それらのショップを集めることで、総合通販サービスとして、ドコモユーザーに使ってもらうというわけだ。ドコモでは新規事業分野で1兆円の売り上げ目標を掲げるが、「1ユーザーが月に2000円分買ってくれれば、4000万ユーザーで800億円。これで年間9600億円になる」(阿佐美氏)という。あくまで目安でしかないが、1兆円も決して不可能ではない数字にも見える。