自民党のプロジェクトチームがNTT法の廃止を求める政府への提言案をまとめたことに対し、NTTを除く通信大手3社のトップらが異例の記者会見を開いた。ジャーナリストの石川温さんは「自民党とNTTグループは独断でNTT法の廃止にこぎ着けようとしているが、それはおかしい。通信大手3社が反対するのは当然だろう。NTT法の在り方について、オープンな場で議論をする必要がある」という――。
自民党プロジェクトチームのNTT法廃止提言を受け、共同記者会見する携帯電話3社のトップ=2023年12月4日午後、東京都中央区
写真=時事通信フォト
自民党プロジェクトチームのNTT法廃止提言を受け、共同記者会見する携帯電話3社のトップ=2023年12月4日午後、東京都中央区

「国民生活にとって重要な決定が密室で行われている」

12月4日、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの通信大手3社は、約180社が加盟する日本ケーブルテレビ連盟と共同で「NTT法の見直しに関する意見表明」の記者会見を開いた。

その3日前の12月1日金曜日、自民党のプロジェクトチームが会合を開き、2025年をめどにNTT法を廃止する提言案が原則、了承されたと報道された。

これをうけて、通信大手3社は「週明けに幹部クラスが出席する記者会見をやる」と2日土曜日にメディアに告知。会見は週明けの月曜日に開かれ、YouTubeでも配信された。登壇者のうち、楽天モバイルの三木谷浩史会長は出張中のインドからオンライン参加だった。通信大手3社が共同記者会見を開くのも異例だが、これだけのスピードでトップ会見が決まるのも異例だ。そこからも各社の危機感が伝わってくる。

会見中、KDDIの髙橋誠社長は「通信会社間のいざこざに見えるかもしれないが、決してそんなことはない」と語気を強めた。確かに「NTT法」と言われても、一般の国民にはピンとこない。4社の幹部からは「いかに国民生活にとって重要な決定が密室で行われているか」の危機感を伝えようと必死の様子が伝わってきた。

実際、ソフトバンクの宮川潤一社長からは「(NTT法を廃止するなら)当然、電話加入権を国民に返すべきという議論もあってしかるべき」と、過去には固定電話を契約するのに必要であった7万2000円(その後、3万6000円)の電話加入権の話を持ち出し、なんとか国民の関心を引きたいという腐心がうかがえた。

そもそも、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルがNTT法の廃止に「絶対反対」というスタンスを取っているのはなぜなのか。