電電公社時代に培った「特別な資産」

NTTには、公社時代から国民の財産で培った「特別な資産」が存在する。例えば、全国に約7000ある局舎や、ケーブルを這わせるための「管路」が60万キロ(地球15周半)、電柱1190万本といった具合だ。NTTは1985年の民営化後、ここに110万キロの光ファイバー網を敷き、電話や通信のサービスを提供している。

KDDIやソフトバンク、楽天モバイルは、携帯電話のサービスを提供しているが、街中にある基地局(アンテナ)は、このNTTが持つ光ファイバー網に接続させてもらって、ユーザーにサービスを提供している。

自民党のプロジェクトチームはNTT法を廃止しようとしているが、仮にNTT法が廃止され、持株会社のNTTやNTT東日本、西日本、さらにはNTTドコモなどが合併すると、この接続料を値上げする恐れが出てくるのだ。

三木谷会長は「日本では、スマホにおける通信のいちばん重要なバックボーンはすべてNTTの特別な資産に支えられている。(中略)NTT法がなくなったら、NTTはいつでも接続料を上げられる」といい、「そんな環境となれば、楽天グループは携帯事業に参入していなかった」としているほどだ。

モバイル通信の基地局
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「私がNTTの社長なら値上げで莫大な利益を得る」

実はKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルだけでなく、NTTドコモもNTTが持つ光ファイバー網に接続してもらってサービスを提供している。仮にNTTが光ファイバー網の接続料をすべての会社に対して値上げしたとしても、NTTドコモに対しても同じ値上げが適用される。

値上げによって、NTTドコモは高額な出費を余儀なくされることになるが、一方で、光ファイバー網を貸しているNTTは値上げで収益が増えることになる。NTT全体でみれば、プラスマイナスゼロで収支は変わらない。

しかし、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルにとってみれば、単なる値上げであり、収益を下げる要素になってくる。これでは「公平な競争はできない」というわけだ。

三木谷会長は「100%子会社のほうを優先することになるだろうし、私(がNTTの社長)ならNTT東西の光ファイバー利用料を20%上げて莫大な利益を得るだろう」と、NTTの経営者目線で推測する。