KDDIの好調のナゾ

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大手3社のMNP利用数/国内シェア

ここ1年、3大キャリアのなかで特に元気なのが、KDDIだ。10年12月に社長に就任した田中孝司氏の手腕によって、元気を取り戻しつつある。MNPの状況を見ると、11カ月連続で転入超過となっているのだ。

その背景にあるのが、固定回線とのセット販売だ。FTTHやケーブルテレビ事業者とも組み、スマートフォンの契約と固定インターネット、固定電話をまとめて契約すると、スマートフォンの月額基本料金を1480円値引く「auスマートバリュー」という料金施策が大ヒット。 開始4カ月で133万契約を獲得するまでに至った。

自宅のインターネット回線をKDDIのFTTHや、周辺地域で営業しているケーブルテレビに乗り換えることで、1人あたり1480円、家族4人であれば月額5920円、 2年間で14万2080円が値引かれるのだから、家計に与えるインパクトは大きい。家族をまるごとターゲットにし、 NTTドコモから携帯電話契約者、さらにNTT東西から固定インターネットの契約者を奪うことに成功している。

NTTドコモや他社からKDDIに乗り換えやすいのには理由がある。それはソフトバンクモバイルに続きiPhoneを導入しただけでなく、Androidスマートフォンもバランスよくラインアップしているからである。サムスン電子「GALAXY」やソニー「Xperia」、LGエレクトロニクス「optimus」、富士通「ARROWS」といったNTTドコモで人気のスマートフォンブランドをすべてKDDIのラインアップに取り込んだのだ。

これまでNTTドコモで使っていたスマートフォンブランドが、KDDIでも用意されていることもあり、キャリアの移行に抵抗を感じないようだ。

KDDIでは、さらにMNPで移行してくるユーザーに対し、数万円規模のキャッシュバックを実施。KDDIに移行するだけで数万円儲かるということもあり、一気にMNP利用者が増えたのだった。

NTTドコモがKDDIに対抗しようとしても、携帯電話と固定回線のセット割引といった施策が行えない。電気通信事業法30条第3項第2号で、市場支配的な事業者は排他的な独占的契約などを禁じられているのだ。

KDDIは、自社の光回線だけでなく、関西では関西電力系のケイ・オプティコムと提携。ケーブルテレビにおいては、ジュピターテレコム(J:COM)をはじめ、全国183局が対象となっている。

NTTドコモでは、家族で機種変更をすると、1台あたり1万円を割り引いたり、複数台を契約すると2台目が安くなるキャンペーンを実施。NTT東西でもフレッツ光の料金を値引くといった施策を展開し、なんとかKDDIへの対抗策を打っているが、料金競争に引っ張られ、防戦一方の状態となっている。NTTグループがKDDIと同等の固定と移動体のセット割引を展開するには、宿敵であるソフトバンクグループと提携するぐらいしか抜け道はなく、ジレンマに襲われている。