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圧倒的なシェアを誇るNTTドコモ、果敢な挑戦を仕掛けるソフトバンクモバイル、既存顧客の囲い込みに走るau、と携帯大手各社の新規顧客争奪戦は熾烈さを極めるばかりだ。営業の最前線に立つ販売代理店の視点から、賢いキャリア選びのコツを聞いた。

「明確に言えることは、お客さまにとっていいものであったとしても、販売代理店はインセンティブ(手数料)の低いものは売らないということです」と言い切るのは、携帯電話の販売代理店を務める三村一郎氏(仮名)。販売代理店は新規契約を新たに獲得すると、携帯キャリアからインセンティブを受け取ることができる。このインセンティブを受け取るために、彼らはあの手この手を尽くして対象顧客に日々アプローチしている。

従って彼らのやる気はインセンティブ次第、近年のソフトバンクのシェア拡大の背景には積極的なインセンティブが存在しているようだ。前出の三村氏は語る。「代理店へのインセンティブは、実は代理店の力によってバラバラです。一般的にソフトバンクはインセンティブが非常に高いと言われています。訪問販売で新規で1万5000円、NPで2万~3万円の販売手数料を受け取れます。有力な代理店によってはさらに5000円プラスされることも。これはソフトバンクの販売戦略が新規獲得によるシェア拡大を志向しているためです。逆にドコモは圧倒的なシェアに安住しているのか、インセンティブがあまり高くありません。auの戦略は囲い込み、携帯以外のインターネット回線などをセットにして抜けられなくするやり方です。3社の純増ですが、結局は代理店へのインセンティブの大きさで決まります。例えば、機種変更はインセンティブがほとんどありません。ですから、ソフトバンクの携帯を持っている人にはiPhoneの新規を促すんです。どのキャリアも一長一短の部分があり、私たちは利益が一番大きいものをお客さまに勧めます。顧客の大部分はどれを買おうか迷っている。メリットを強調すれば誘導することは可能です。それと、iPhoneが出てからのソフトバンクの攻勢はやはり凄い。一時期頭打ちになった業界に2台持ちの需要をつくり出した」。

私たちが賢い顧客になるためにはどうすればいいのか。三村氏は言葉を続ける。

「最近はGmailだけを利用し、携帯のメールを使う人が減っています。顧客が携帯のキャリア変更を嫌う理由の大部分は、メアドの変更を嫌うためですが、そのような傾向も徐々に減っていくのではないでしょうか。キャリア間の違いも減っています」

三村氏に自身の携帯の保有状況を聞いた。「私は、ウィルコムとiPhoneの2台持ちです。意外なことに3.11の東日本大震災の発災時にウィルコムの携帯だけは何もなかったように家族の電話につながりました。きっと利用者が少ないからだと思うのですが、このときばかりはウィルコムを持っていてよかったと思いました。通話品質もいい。端末もiPhoneを除けば大手3社の携帯を持つメリットも感じません」「顧客に一番合った携帯かのように勧めておいて、実は私たちが儲けているというのは誠に申し訳ないのですが、こちらも生活がありますので」。

(PANA=写真)
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