一つひとつ問題点をつぶしていった

朝田氏たちはフィールドワークで見いだした問題を一つひとつつぶすことで、タンザニアにおけるビジネスプランを作成していった。導入コストが高いという問題は、サブスクやレンタルのような、分割払いの料金プランを用意すれば解消できそうである。サブスクであれば、ユーザーにとってもお試し導入のハードルは低くなる。一方で、導入後の電気代の高さの問題は、省エネ性能に優れたダイキンのエアコンであれば、格安エアコンの半額以下の電気消費量で済むわけで、使い続けてもらいやすくなる。

写真=中島祥太氏提供
ダルエスサラームでの設置作業

では、メンテナンス・サービスはどうか。高品質なダイキンのエアコンでは、そもそも稼働のトラブルは生じにくい。問題が起きたときも迅速かつ確実な対応を行うアフターサービスの体制を用意すれば、ユーザーも安心して利用してくれるのではないか。

10人呼んだ据え付け業者のうち、やって来たのは5人

朝田氏たちは試しに、エアコンの据え付けを請け負っている個人業者10人に、据え付け作業の発注を行ってみた。ところが当日、朝田氏たちの前に現れたのは、10人中5人だけだった。タンザニアの据え付け業者たちは工具を所有していないのが普通で、誰かに借りて現場にやってくる。現れなかった5人は、必要な工具を借りることができなかったのである。しかも、依頼した工事に対処できる技術を持っていたのは、集まった5人のうち1人だけだった。

現地の業者たちのなかには、行き届いた工事や修理を行うことへの意欲が低い人も少なくない。例えば修理に訪れた業者が、エアコンのガス漏れの原因を直さず、ガスを充填じゅうてんするだけで帰ってしまうといったことがよく起こる。ガス漏れは止まっていないので、1カ月ほど後にまたガスを充填しなければならなくなるが、業者はまた仕事にありつける。朝田氏たちはBaridi Baridiが事業を展開していく上で、自前のサービス体制を整えることの重要性を再認識した。

さまざまな実証実験を積み重ねたのち、Baridi Baridiは2021年からエアコンのサブスク・サービスを本格的に開始した。ユーザーは導入時に据え付け工事費だけを負担し、あとは使いたい分を課金で支払う形。通報から24時間以内に対応する故障修理サービスも、課金内でカバーされる。