100人近い部門横断チーム

ダイキン工業 空調生産本部 小型RAグループリーダー 小泉 淳氏●1971年生まれ。日本大学理工学部卒。某メーカー勤務を経て、2002年、ダイキン工業入社。09年より現職。

「滋賀工場は40年前からルームエアコンを開発、生産してきた。モノづくりの現場は海外にシフトしているが、滋賀のモノづくりの魂を絶やしてはいけない。絶対に『うるさら7』の開発をやり遂げて、ルームエアコンで勝ちにいこうじゃないか」

2010年6月、ダイキン工業滋賀工場の会議室。滋賀製作所長で常務執行役員の岡田慎也が、大勢の部下を前に、ポロポロと涙をこぼしながらこう語りかけていたときのことだ。そばにいた小泉淳の目にも涙がどっとあふれていた。小泉はこの半年前、岡田の下でルームエアコンのグループリーダーとなり、新商品「うるさら7」を任されていたのだが、岡田が決起集会をしたこの時期、開発は暗礁に乗り上げており、暗いムードが漂っていたのだった。

「でも、絶対にやり遂げなければいけないんだ」。小泉にとって、尊敬する岡田のスピーチは、一生忘れられない、自らを奮い立たせる原動力となった。

ダイキンは1999年に独自の無給水加湿技術を搭載した「うるるとさらら」を発売。このヒットによりルームエアコンで国内シェアナンバーワンの座を獲得した。しかし国内の好調期は長く続かず、世界戦略の一環として中国の珠海格力電器との協業を推進したことなどが業界の話題をさらっていく。華々しい海外戦略の傍ら、国内製造現場の危機感は募る一方だった。

そこで浮上したのが「うるるとさらら」のフルモデルチェンジだった。単なる改良版ではなく、エアコンをゼロからつくり直そうとの新規プロジェクトで、小泉の下に若手のエース3人が集められたのだ。ただしエアコンは一つのチームだけではつくれない。営業や商品企画など総勢100人近くを巻き込み、「脱うるさら」に向けた陣頭指揮を小泉が執ることになった。

「毎朝、部屋をぐるっと見渡すんですよ。そうすると視界の中に技術者一人ひとりの顔がしっかり見えるものですからね」