人懐っこい笑顔でこう語る小泉は明るくフランクな性格だ。リーダーとなっても、毎朝定例会議をするなど形式的なことは性に合わず、自由に情報交換することに重きを置いた。アトランダムに部下の机を回り、もし頭を抱えている者がいたら声を掛け、ときにはその場で膝を交えてじっくり語り合う、といった具合で、「社内にいる日は、とにかく1日中ずっと誰かとしゃべっていますね。昼間は最大限、コミュニケーションを取る時間を優先しています」と語る。

書類のチェックは、その場で即実施
部下が持ってきた書類はその場で即チェックするため、必ず説明を求める。「お願いします、のメモだけでは突き返します」。サインはこのペンで。携帯は2台を駆使。スマホは添付ファイルの確認用。

自由に動き回る「アポなしマネジメント」の一方で、アポイントはスケジュール管理ソフト「サイボウズ」を使い、それを部下にも見えるようにして隙間タイムに予定を入れてもらうようにした。すると、「この時間帯で30分間ください」という部下からの積極的な相談が続々と入るように。小泉の机を取り囲んで、部下たちが椅子を寄せ合い、突如ミニ会議が始まることもしばしばあった。

完成に向けて課題は山積していた。経営陣からは、省エネ基準とされているAPF(通年エネルギー消費効率)を7.0にすることや、冷房時の消費電力削減に効果が高い「新冷媒R32」の採用が指示されていた。それと連動して、前モデルの課題だった室外機の小型化にも取り組む必要があった。いずれも省エネナンバーワンを目指すダイキンとして、世界に先駆けて取り組まなければならない新しい挑戦であり、乗り越えるのが困難な壁に何度もぶつかった。

「うるさら7」プロジェクトには、大まかに分けると、構造、性能、気流の各グループがある。これらが同時進行で課題を話し合い、かつ関連部門とも横軸で相談しなければならない。小泉は総大将として日中のほぼすべての時間をコミュニケーションに充てるため、自分一人で行うメールチェックやプランニングは朝と晩の時間帯に集中させることにした。一人で過ごす時間と部下や関係者と過ごす時間をはっきり区別したのだ。

「朝は5時過ぎから1時間以上、夜も10時から12時までの間にメールチェックや情報収集をします。朝は1日のプランニングもして昼間はずっとDo。1日でPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクト)サイクルを回す感じです。海外や関連部門、上司からもメールがバンバン入りますが、気になることは会社でお互いの顔を見て相談するような時間配分にしました」