なぜ自動的に報告が上がってくるのか?
小泉がもう一つ取り組んだのが週報の提出だった。合計15あるチームごとに、その週に実施した仕事内容や課題、計画を書き出したレポートを、毎週金曜日の夜までにメールで提出させるというもの。末端の部下がチームリーダーに提出する週報を、その上にいる自分もダブルチェックするという作業で、これに土曜日の午前中3~4時間を充てた。形式的なことには一切こだわらないが、土曜朝に提出されていない場合は容赦なく電話で催促する。週末に用事が入ったときは、プライベートな時間を削ってでも必ず週内にはチェックするようにした。
「きちんと見ている」という姿勢を徹底することで自動的に「うまくいっているチームからは締め切り前にわかりやすい週報がくるようになり、進み具合が手に取るようにわかった」。状況次第では月曜日にディスカッションして、1週間以上遅れないようにすることも忘れない。
小泉がこうした厳しいタイムマネジメントに取り組んだのには、計画の遅れは絶対に許されないという事情があったからだ。
通常、各メーカーとも毎年秋に次年度モデルの新商品を発表する。エアコンの開発期間は約1年といわれており、「うるさら7」も例外ではなかったが、今回は高度で挑戦的な開発だったため、小泉は途中で経営陣に直談判、異例の2年という開発期間を申し出て承認を得ていたのだった。もはや、これ以上の期間延長はできなかった。
最大の困難は「新冷媒R32」を小型室外機に埋め込む作業だったが、室外構造の若手エンジニアが中心となって試作を繰り返し、ブレークスルーしたことで一気に実現に漕ぎ着けた。
完成したのは発売予定1カ月前の12年10月。小泉に新商品のキャッチコピーを求めると、「世界初、次世代の冷媒R32を使用、世界最高峰の省エネとAPF7.0を達成したエアコンの最高傑作です」と胸を張る。
だが、心はすでに次の新商品へと向かっている。新たなる挑戦のため、早朝と深夜のメールチェックは今後も続けていくつもりだ。
(文中敬称略)