旅行や音楽会で人と関わり感性を磨く
ビジネスで大きな決断を迫られるとき、情報やそれに基づいた分析力や論理力も必要ですが、最後は「動物的な勘」で決断してきたことが多いように思います。
2000年代前半、ヨーロッパが記録的な猛暑に襲われ、暖房中心の市場で一気に冷房が普及する可能性がありました。私は現地に入り込んで販売計画の練り直しを指示し、業務用ではなく、家庭用のルームエアコンの生産を他社に先んじて一気に拡大しました。もちろん情報収集や分析はそれなりにしていましたが、戦略の方向性がおおよそ定まったところで一気に決断を下しました。現地に飛び、現場を見たとき、私の目にはそのときこそが「欧州エアコン市場の夜明け」とうつったのです。この動物的な勘によるタイムリーな決断が、その後に当社の欧州事業が急成長する基盤となりました。
これだけ様々な情報が交錯する時代、他人が気づかない隙間や暗闇に潜むチャンスを見極める感性の力こそが、ここぞというときの勝負を決めるように思います。
そのためにも人生の関心事はできるだけ広範囲のほうがよい。それが自分の人間としての幅を広げ、多面的に考え、難しい局面での決断能力につながっていくのだと思います。
他社を見ても、優れた経営者には感性豊かな人が多い。美しい音楽を聴いたり、社内外問わず、様々な人との交流の中で心温まる話を聞いて素直に感動できる……そういう感受性がある経営者に人はついていこうとするものかもしれません。
私はゴールデンウイークには、「異業種研修会」と称して、仲のいい経営者夫妻数組でハワイで過ごします。今年で3回目になりますが、旅を楽しみながら、昼間に時間を決めて、グローバル経営の話や、今年であればトランプ大統領就任後の米国経済をどう見るかなどテーマを決めて4~5時間フリーディスカッションをする。業種が違う経営者同士なので本当に勉強になりますよ。
6月、7月は蓼科や軽井沢などの当社研修施設を開放してコンサートを開催し、経済界や政界の方々をお招きして交流を深めます。
こういった時間こそが自らの感性を磨き上げ、仕事人生を豊かにしてくれているとしみじみ思います。